ピーターパン症候群、なる子です。
大人になれないまま、こんな歳に…
ああ、大人なのに不完全。
子どもは子どもではない。「不完全な大人」である。
さて、本題の「子どもは不完全な大人」についてです。
この表現だけ先に見ると、子どもの人権を大切にする方々からクレームが来そうです。
実はこれ、日本の話ではなく、キリスト教の考えから派生した米英での話です。関連する国々、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドなどでも共通することがあるかもしれません。
誤解を生むと良くないので早めに言っておきますが、歴史上の過去の話です。今はみなさん新しい考え方を持っているのでご安心を。
しかし、ここを抑えていないと英米の文化・日本の文化との違いを理解するのは難しい。
英米児童文化において、かなり重要なキーワードではないか、と思っています。
18世紀終わり頃まで、子どもというものは完全に大人になりきっていない状態である、と考えられていました。
キリスト教では、人間は業を背負って生まれてくるという考えがあります。
「原罪」です。
赤ちゃんが泣くのも、立てないのも、言葉が喋れないのも、原罪ゆえ不完全であるからと思われていました。
早く完全な大人にする為に、厳しく育てたと言います。
中世ヨーロッパの絵画を見ると、赤ん坊がミイラのように包帯のようなものでぐるぐる巻きにされているのを見かけます。
これは、足を大人のようにまっすぐにさせるためのものです。恐ろしい。
「不完全な大人」は大人と一緒にベッドで寝るということもなく、物心ついた頃には労働をさせられている、ということが普通でした。大人と一緒のことができることを子どもの頃から求められていたのです。
できないことがあるのは「不完全」だから。という社会でした。
子どもには特別な「愛情」と「教育」が必要という概念が全くなかったのです。
そして、子どもたちの遊びやおもちゃは限られたものしかなく、というか発達しようがなかったのです。
海外時代物ドラマや映画で、怒鳴られたり、家庭教師や親から厳しくされたり、もう気の毒になるような描写があったりしますよね。あれは親が冷たいのではなく、社会的なものなのでしょうね。厳しくするのは、「早く一人前の大人になってほしい。」という親の願いであったかもしれません。
病みそう…。
「子ども」の概念が生まれた!
18世紀、子どもたちにとって暗黒の時代に変化が起こり始めます。
子ども革命と勝手に命名します。
まず、人間の心は「白紙(tabula rasa)」の状態から始まり、経験によって成長していくという認識論・経験主義をイギリスの哲学者ジョン・ロックが提唱します。
また、フランスの哲学者ジャン=ジャック・ルソーは、子どもの自発性と感受性を重要視した教育論を展開し、これが中流階級に浸透すると、「子ども時代は、人生においてかけがえのない時期である。」という考え方が広まっていったのです。
そこでついにイギリスでも、あらゆる場面で「子どものための〇〇」が必要になってきたのです。
教育、文学、遊び、おもちゃ!
英児童文学が花開く
このような時代を経て、人々に求められたのが「児童文学」でした。
18世紀後半には、「面白くて、ためになる。」子どものための本が現れ、挿絵の入ったものや、絵本が登場し、19世紀には児童文学は大きな花を咲かせます。
英文学としては「小公子」「ピーター・ラビット」「不思議の国のアリス」など。現代の私たちでも知っているものが数多くあります。
19世紀後半では印刷技術の発展もあり、美しい挿絵が施されたものがたくさん出版されました。
復刻本ですが、「マリーゴールド・ガーデン」は宝物です。うふ。
西洋のおもちゃの歴史を博物館で!
イギリス、ロンドンのV&A Museum of Childhoodは、児童文化の歴史を堪能するのにうってつけの場所です。
アンティークのドールハウスや歴代かわいいおもちゃがたくさん展示されています。
V&Aと言えば、South Kensingtonの博物館が有名ですが、こちらはCambridge Heathという全然違う場所にあります。
アンティークおもちゃを見るのが好きな人は是非行って欲しい。オススメの博物館です。
family eventもやってますよ!
【今回の参考文献】
イギリス文化入門 [ 下楠昌哉 ] |