今週のお題「雛祭り」
ひな祭りは、女の子の成長をお祝いする日。ブロガーの方々が愛に溢れた記事を書いているのを読んでほっこりしています。
うちの実家の場合、雛人形についてなかなか片付けなかったり、出さない年もあったような気もするけれど、お嫁にいけないのはそのせいではないし、雛人形の出す出さない片付けるの遅いとかで親の愛を測れるものでもないですよね。
私は子どものいない人生だけれど、歳をとっても娘なので、親の尊さを思う日でもあります。
娘を思う親の愛は国境を越えるなと、ひしひしと感じたドキュメンタリーがあります。AppleTV+で公開中の「ビリー・アイリッシュ:世界は少しぼやけている」です。色々考えさせられたので紹介したいと思います。
ビリー・アイリッシュ:世界は少しぼやけている — 公式予告編 | Apple TV+
そもそもビリー・アイリッシュ知ってますか?
私は音楽をほとんど聞かないし、アメリカで若者に人気の中二病っぽい髪の毛蛍光緑の歌手ってことぐらいしか知らなかったのだけれど、この動画を見て随分印象が変わりました。
想像以上のメンタルもフィジカルもボロボロで、
想像以上に家族に愛されていました。
若きスターのドキュメンタリー映画なので、成長や苦悩を追いかけるのは定番なのだと思うけれど、こんなにも家族に支えられている大スターというのは、新しい姿だなと思いました。
アメリカの家族像が見えてくるし、とってもとっても面白かったです。
ビリーのファンからは「ドキュメンタリー一本見たぐらいでわかったような口をきくな」と怒られても仕方ないと思うけれど、ちょっとおばさんにも色々言わせてくれ。
↑目はいつもどこか睨みつけてるようなイメージ。
ビリーはお兄ちゃんと歌を作っている
知ってた?私知らなかったんだよね。今回は特にお母さんの話をしたいのだけれど、まずお兄ちゃんの話をさせて欲しい。このお兄ちゃんを育てたのもまたビリーの両親なのだから。
ビリーはお兄ちゃんと一緒に曲を作っている。バックグラウンドには、ずっと幼い頃から家族みんなで音楽セッションを楽しんでいて、みんなで音楽祭みたいなのに出たりして、ずっと子どもの頃からお兄ちゃんとハモって生きてきたという家庭環境がある。ビリーが「一曲の歌みたいな家族」と表現するほど、音楽という絆で繋がっている家庭で育った。学校は行かずホームスクール育ち、音楽が好きで家族で演奏する日常って本当にアメリカっぽい。幼い頃のホームビデオもいっぱい出てきて、めちゃんこ可愛いので注目。
ドキュメンタリーは17歳の頃から始まっていて、お兄ちゃんの小さな寝室でゴロゴロしながらアルバムを作る様子が撮影されている。すごく仲良しでリラックスしているのがいい。立派なスタジオとかじゃなくて、暖かな光がカーテン越しに差し込む普通の家で歌が生まれる瞬間ってとてもいい。これがグラミー賞とっちゃうんだ。
誰でも音楽を作れる時代。この様子を見ただけでちょっと感動してしまった。
で、このお兄ちゃんがめちゃめちゃ精神安定してる。
ビリーがピリピリして、「だめ!最悪な声!」ってなってもお兄ちゃんは割に冷静でポジティブ。「そう?すごく良かったよ。」って言い続けてくれる。
思春期厨二病のビリーが一人で曲なんか作ってたら完全に落ち込んでしまうと思う。お兄ちゃんの音楽の才能と安定感がやばい。お兄ちゃんもグラミーでベストプロデューサー賞取っているけど、ビリーの曲はお兄ちゃんなくしては絶対に完成しない。アメリカンポップっぽくない美しいメロディラインもお兄ちゃんの力が大きいんじゃないだろうか。ドキュメンタリーの前半はお兄ちゃんの凄さが際立つ。
余談だけど、後半はお兄ちゃん彼女と一緒に住むために家を出たっぽいのであまり出てこない。ずっとお兄ちゃんにぺったりくっついてる彼女がピチピチラインの服着ていて、すごくアメリカ人の女の子っぽくて、なんか笑える。
お母さんはずっといる
このドキュメンタリーで一番印象的なのはお母さんの存在。マジですごい。
娘を絶対に守るという信念がにじみ出ている。
「どんな若いアーティストでも、親のサポートは不可欠」と言い切っている。
ビリーはジャスティンビーバーの大ファンを公言していて、お母さんもそのことをよくわかっているのだけど、まず、母親目線でジャスティンのことを語っていたのが印象的だった。10代のうちにスターダムに上がっちゃうのは本当に怖い。家族のサポートなしにやっていくなんて絶対に考えられないとお母さんは思っている。ジャスティンが名声を手に入れたその後どんな人生を歩んできたかはアメリカ人なら大抵よく知っていると思うし、お母さんにとっては笑いごとではない。ジャスティンが味わったような苦しみからなるべく守ろうとしているのがわかる。だから、お母さんはツアーもインタビューも仕事はビリーと一緒に行動する。ステージママというわけではなく、完全なサポートメンバーだと思う。
ビリーがラッパーのQと付き合い初めた時も、多分お母さんは「ビリーにとっていい相手ではない」と心の中では思っているけれど、黙って見守っている。スキャンダルにならなかったのはお母さんが陰で守っていたのかもしれない。
お母さんが見つめる現代
ビリーの歌詞は暗いのが多くて、「屋根から飛び降りる」とか出てきてお母さんはギョッとする。「本当に思ったことあるよ。曲にすることで行動しなくて済んでいる。」とビリーは答える。
お母さんはドキュメンタリー内で、「ビリーの曲は落ち込むってよく評されるけれど、ビリーが特別病んでるわけではない。今、10代を生きることが辛い時代。子ども達はみんな落ち込んでいる。」と語っている。
こんな理解者がそばでサポートしてくれるってすごいことだと思う。
なぜビリーの曲が若者の共感を得ているのかを、母親がすごく理解しているし、10代の娘が急に有名になってしまうことに舞い上がるのではなく、危機感を持ってサポートしている。ビリーはもっと若い頃にダンスで怪我をしてから、怪我しやすいみたいで、特にツアー中なんかは無理なパフォーマンスでずっと体がボロボロ。足はテーピングでガチガチ。さらに怪我をして固定具。フィジカルな怪我は心にも影響する。「治っても完全には治らないって何!?」と取り乱すビリーに、「筋肉をしっかりつけるトレーニングを続けましょう。治ったと思ってもずっと続けるの。そうすることで怪我はしにくくなるのよ。」とお母さんは言う。
安易にパフォーマンスは諦めろとか言うのではなく、どうすれば続けていけるかを話してくれる。
このお母さんの言葉を聞いていると、私までビリーのことを心配しちゃう気持ちになってくる。大好きな歌を続けていって欲しいし、どうか幸せでいて欲しい。
でも、子どもは親から離れていく
10代も終わりに近づけば、当然子どもは親離れしたいと思い始めるし、ビリーの両親がビリーのサポートをしているのは突然大人に囲まれるような環境になってしまったビリーを守るためにとった特別処置に違いない。保護と干渉のバランスが一番難しい時期にこの両親は本当によくやっているな、という印象を持った。
両親も芸能関係を生業にしていたらしいけれど、家の映像の雰囲気から見るとそんなに裕福というわけでもなく、一般的なアメリカ人家庭っぽい感じがした。「お母さんはバンに乗っていて、お父さんはマツダ。お兄ちゃんも自分の好きな車を手に入れて、私も車が欲しい!」とビリーは運転免許を取得する。
そんなビリーに仕事の関係者から車がプレゼントされる。すっごいスピード出そうなやつ。
すっごいスピード出るっていうスペックを「ビリーには教えてない。」と両親は言う。「あらゆる安全装置をつける。」と母親は宣言。父親が安全の心得を一生懸命ビリーに伝えようとするけれど、運転免許を取ってすぐに彼氏に会いたいビリーは「わかった、わかった。」と適当にあしらってそのまま飛び出してしまう。それを後で知ったお母さんが、「私と話をするって約束だったのに。もう運転しているなら電話もできないわ。」とものすごく心配する。しかも、自分の娘のことを大して愛してもいないし、暴力事件も起こしたことのある彼氏のところに向かっていると思うと超心配。ああ、お母さん、、、。
ビリーはもう大スターだけれど、両親にとっては本当に「娘」なんだな、とよくわかるシーンでした。
車社会のアメリカでは、車を持つ、一人で運転するってことが自立の儀式みたいなことなのだと知り、なるほどなと思いました。
小学生が歩いて一人で学校に行くとか、あり得ない国ですからね。
スターのドキュメンタリーを見たらどこの家庭とも変わらぬ母の愛を見た
若きスターのドキュメンタリーで見えたのは才能や情熱、成長もさることながら、類稀なる家族の愛でした。
こんなに温かい家庭でも気持ちが落ち込む時代って本当に大変なことですね。
「どんな風になりたいか、未来のことを聞かれることは多いけど、答えたくない。今何をするかが重要課題。」(ビリー)
将来の夢や希望を安易には語れない、見通しの立たない世の中だと私も感じます。
現在ビリー・アイリッシュは19歳ということなので、両親と離れて過ごす時間も増えているかもしれません。あまりにも有名になりすぎた10代を過ごし、これからどう生きていくんだろう。名声やお金と共にきっと凡人には想像もつかない苦悩もまとわりついてくるはず。どうかこれ以上ボロボロにならないで、元気でいて欲しい。家族で乗り越えていって欲しいなと思ったのでした。
予告編もいい感じでできてるので、ぜひ見てね。
おまけ
ジャスティン・ビーバーがまだ20代ってことにも驚いているよ。もう何人分の人生歩んだ?ってくらい、なんかスキャンダルとか色々あったよね。。。
ジャスティンにハグしてもらって感極まって泣いちゃうビリーも可愛いかったです。