「空はなんで青いんだろう」「どうして葉っぱは緑から赤に変わるのかな」そんな自然に対して不思議に思う心は誰しも持っているのではないでしょうか。
資生堂ギャラリーで高田安規子・政子の展示が開催中です。彼女たちは一卵性の双子のユニットアーティストです。一卵性の双子で、しかもユニットアーティストだなんて、もはや存在そのものが世界の不思議ですよね。彼女たちは数学・物理や科学の世界、空間や時間のスケールを身近な物を使って表現しています。つまり、世界の不思議を解明しようとするその手段を、科学者とは違った視点で、アートを用いて試みているんですね。
自然界の中にある不思議の一つに「フルクタル」と呼ばれるものがあります。大きな全体と小さな一部分が相似する構造を持っていることをフルクタルと言うそうです。
身近なところでは、葉っぱの葉脈の形と、その樹木の樹形が同様な構造を持っていることなど。
このように、世界には同じような構造を持っているものが沢山あり、視点を変えると面白いことを発見できる喜びってありますよね。ミクロとマクロが同時にあるような感じです。
展覧会のメインビジュアルにもなっている、天体の図と砂鉄を使った作品。
「そうだ、地球って大きな磁石だよね!」と改めて気づかせてくれる美しい作品だな、と思いました。
雪の結晶もフルクタルになっているのだそうです。
スケール(大きさ)の認識。ミニチュアのベッドが置かれていることで気づくと思いますが、私たちは自然にミクロやマクロの視点を持つことが、できているんだなと思いました。
ベッドの作品の主なテーマとしては可視光線の色相をキルトにしたものですが、同時に人それぞれにとって、サイズの合うベッドの大きさが違うことも示している、多様性を示す作品でもあります。
カタバミは気温の高い場所では赤色化する進化を辿っているらしい。
資生堂ギャラリーは地下にあるという特性を活かし、地層の棚が作られていました。人間の探究心も本の地層となって積まれていくようなイメージが浮かんできました。
貴重そうな本に石が埋め込まれているのを見ると、「もったいない!」と思ってしまいましたが、ズブズブっと石と同化していくイメージをアニメーションではなくアナログで作るとこんな感じになりそうだな〜、と思い直しました。思い切って穴を開けたアーティストの勇気もすごい。
全体的にすごく、明解でわかりやすい。髙田姉妹もトークでおっしゃっていましたが、大人から子どもまで、幅広い人に間口を開ける展示を意図して作っているそうです。
難解なアートもありですが、このように多くの人が楽しめる作品を展開するアーティストとその展示をサポートする人たちがいることも、現代アートの多様性ですよね。
常々、アートと科学は似ているなあ、と思っていたので、このような形で表現してくれるアートがあって、とても嬉しいです。最近はテクノロジーを使った科学系のアートも増えているのですが、表現の手法がかなりアナログなのも、好み。子どもの頃持っていた、自然や科学への好奇心を思い出させるような展示でした。
銀座の赤いShiseidoビルの地下です。
こちらの展示は2025年12月7日まで。
https://gallery.shiseido.com/jp/
https://bijutsutecho.com/magazine/news/report/31257