今週のお題「わたしの好きな歌」
昔昔、関西ローカルテレビ番組「探偵ナイトスクープ!」でモンゴルの民謡ホーミーというものを初めて知り、衝撃を受けました。
今はもうご存知の方も多いかと思います。喉を笛のように使った特殊な歌唱法で、一人の喉から2音階出す、というのです。超人だわ。
番組後、ホーミーがマイブーム。
ホーミー風の声を出して遊んでいたものです。
民謡には不思議な魅力がありますよね。
モンゴル民謡
沖縄民謡
ブルガリア民謡
…と、
幾度となく民謡マイブームがやってきたものです。
中でもモンゴルは日本人のルーツの一つと言われている場所です。私のチーズなどの乳製品好き、ラム肉好き、などはモンゴルのDNAのせいに違いない、と勝手に思っています。
モンゴル音楽と言えば、ホーミー以外にも外せないものがあります。
馬頭琴です。
モンゴルのチェロ、もしくはバイオリンと言えばいいでしょうか。
旋律がまた美しいのですよね。
あんまり実物を聴く機会はないと思うのですが、イギリス・ロンドンで毎夏開催されるPromsという音楽の祭典で、ヨーヨー・マと仲間たちの公演を聴きに行った時に、珍しい東洋の楽器の数々の中に馬頭琴もありました。実際に聴くことができて、とっても嬉しかった記憶があります。
なぜ、こんなことを思い出したのかと言うと、久しぶりに「スーホの白い馬」を読んだからです。言わずと知れた名作絵本ですが、主人公のスーホと白い馬の絆が泣ける一冊です。名作なので、ネタバレで話を進めますが、死んでしまった白馬の骨や皮を使って楽器を作った、それが馬頭琴である、と言うのがお話の結末です。
実際には白樺の木などを使っていて、骨は使われていないはずですが、昔は表面に仔馬やヤギの皮が使っていたことがあるそうです。
棹の先が馬の頭の形をしているので馬頭琴と呼ぶそうです。
この楽器がマジカルなのは絵本でも感じるところですが、その凄さを一番感じられる映画があります。
「らくだの涙(Weeping Camel)」2003年、ドイツの学生が卒業制作で撮ったドキュメンタリーフィルムです。
【あらすじ】(ネタバレ)
モンゴルの遊牧民家庭。ヤギ、ひつじ、らくだなどを飼って暮しています。ある日、らくだのお母さんが、白い子らくだを出産しました。しかし、そのお産はとても苦しい難産で、トラウマになってしまったお母さんらくだは子らくだから目をそらし、授乳を拒否します。直接お母さんからお乳をもらえない子らくだを家族は必死で育てようとしますが、なんとかお母さんに子育てをしてほしいと思います。
そこで、兄弟が街に出て、音楽の先生に依頼をするのです。お母さんらくだの心を癒してほしい、と。
相変わらず、らくだのお母さんは子らくだを近づけるだけで、パニックになって暴れ出します。
音楽家の先生は暴れるお母さんらくだの首に馬頭琴を掛けました。
すると、ゴビ砂漠の風が、馬頭琴の中に吹き込み、かすかに音が響きます。
次第に落ち着きを取り戻すお母さんらくだ。
そして、音楽家の先生はそっと馬頭琴をお母さんから外し、音楽を奏で始めます。
…ポロポロと、本当に嘘みたいにポロポロとお母さんらくだの目から涙がこぼれ、ついにお母さんらくだは自分の子どもを受け入れるのです。
製作から15年以上経ったのですね。今、モンゴルはすごい勢いで近代化が進んでいるので、遊牧民の暮らしも相当変化しているのではないかと思います。
この映画でも最後は大きなアンテナとテレビが家族の元にやってきたところで終わりました。ちょっと切ない気持ち。
「スーホの白い馬」「らくだの涙」のどちらにも共通するのは、動物たちは「家畜」ではなく、遊牧民の「家族」であることをしっかり描いていることです。馬頭琴の音色には遊牧民の「愛」が込められている。そりゃ、心に響くはずだ。
果てしない砂漠と広い空。吹き抜ける風を感じ、油断してたら涙腺崩壊の2作です。
好きな歌、、、のお題からちょっと外れちゃいましたが、まあいいか。
モンゴルの草原で、ホーミーと馬頭琴、聴きたいな〜!