クリスマスって謎イベントすぎる。一体なんなん?と思っていた。
一般的なクリスマスのイメージってどんなものでしょうか。
クリスマスはキリストの生誕をお祝いする日で、イブの晩にはサンタクロースがトナカイのそりに乗って子どもたちにプレゼントを持ってきてくれる。
クリスマスパーティーでは苺のケーキが定番。
お年頃になると、クリスマスは恋人たちのものになり、シングルはジングルじゃない悲しいベルを鳴らす…。
そんなわけないだろ。って思ったことないですか?
日本のクリスマスは、絶対本場のクリスマスと違うはず。
いやしかし、本場のクリスマスって何?
イギリスでは12月26日はボクシングデーって呼ばれていたけど、あれ何?
”12月25日はキリストの誕生日”は、こじつけって聞いたことあるけど本当?
とにかく、クリスマスって一体なんなん?
と、不思議に思うだけでなく、なんだか得体の知れないもののような気がして、ちょっと苦手意識がありました。
そんな私のために、多様な方面からクリスマスの謎を解き明かしてくれる本に出会いました。
『図説クリスマス全史』(タラ・ムーア著)です。
原作は2014年発行ですが、日本では翻訳されて今年、2021年に初版が出たところです。
起源からコロナ前までの今のクリスマスについて、これでもかと詰め込まれています。
結論から言うと、めちゃめちゃ面白かったです。
全文Wikipediaに載せて欲しい。
へ〜〜〜!の連続!!内容一部紹介
全300ページ、全部面白いし、写真も充実しているので、すごくわかりやすかったです。
少々ネタバレになってしまいますが、私自身がちょっとメモっておきたいいくつかをピックアップします。意訳な感じのメモですので、正確な内容を知りたい人は、ぜひ本を読んでください。
クリスマスの起源
ローマ帝国では12月の冬至前後、農業の神様サトゥルヌスを祭る収穫祭、サトゥルナリア祭を催していた。3世紀に初期の教会が、「これ、キリスト教の冬の祝日にしよう!」と12月25日は祝日になった。土着の信仰をキリスト教がうまく丸め込みながら浸透していったようだ。
12月25日はキリストの誕生日ではない、可能性が高い
そもそも聖書にはキリストの生誕について詳しい記述はなく、生まれた年さえもわかっていない。現代の研究では紀元前6年〜4年の間、と言われていて、受胎告知は3月25日ということになっているので、12月くらいが適当なのでは、という説があり、実際、世の中が大体キリスト教に染まってから12月25日がキリストの誕生日ということになった。
12月25日はペルシア由来のミトラ教(ローマ兵に人気の宗教)の太陽神ミトラスの誕生日。
また、アウレリアヌス帝は274年に冬至の12月25日を太陽神ソル・インウィクトゥスの祝日にした。すでに、キリストの誕生日になる準備はできており、古い信仰とキリスト教が融合して、結果キリスト教が勢い勝ちし、降誕祭として広まることとなった。
聖書にはキリストの誕生日については載っていないので、12月25日をキリストの生誕日としない宗派もある。
そういう事情もあるためか、キリスト教徒にとって、一般的には復活祭(イースター)の方が格上。クリスマスをとても大事にする北欧地域とかは、「ユール」というキリスト教前からある土着信仰のお祭りと混合したことが理由と言える。つまりはノルウェーでは、クリスマスではなく「ユール」。
アドベントは断食期間
アドベントカレンダーで少し馴染み出したアドベント(待降節)はクリスマスまでの4週間のこと。6世紀に始まって、修道士たちが11月11日から断食していたらしい。
公現祭までクリスマスは無礼講
クリスマスから12日間が休息期間で、最後の日が公現祭と呼ばれている。
西ヨーロッパでは、無礼講の季節でもあり、フランスのガレット・デ・ロワはその名残。ケーキの中の豆粒(フェーブ)を見つけた人が王様になる。他にも少年司祭を立てたり、平民を戴冠させる遊びを貴族が楽しんだりしていた。
これらもローマのサトゥルナリア祭で、主人が奴隷に奉仕するという慣習を引き継いだのではと言われている。
クリスマスツリーの歴史
古代ヨーロッパでは樹木を祝祭に用いる慣習があった。これをキリスト教に取り入れようと提案したのは一説によるとマルティン・ルターらしい。流行りすぎて、常緑樹の伐採が禁止されたこともあった。ドイツで広まったこの慣習が、クリスマスのお手本としてドイツ式クリスマスが世界に広まっていくと共に各地に浸透していった。
ちなみに、毎年ロンドンのトラファルガースクエアにはノルウェーから贈られるツリーが飾られる。第2次世界大戦中、ロンドンに亡命していたノルウェーのホーコン国王に特殊部隊が故国のツリーを届けたことが始まりで、1947年から続いている。2021年の今年は、「今年のツリーはすかすかでみすぼらしい」とロンドン市民から不満の声が上がったが、ツリー公式Twitterは、「自分の枝はまばらなのではなく、ソーシャルディスタンス」と冗談を飛ばした。
現在のスタイルのクリスマスのルーツはドイツ。ドイツのおもちゃはイギリスでも大人気だったらしい。(写真手前左、ドイツの木製オーナメント)
陶器のひよこは、ガレット・デ・ロワから出てきたもの。
あとは是非読んでみて!
他にも商業化するクリスマスや、クリスマスとエンターテイメント、世界のクリスマス、日本のクリスマス、戦争とクリスマス、サンタの起源、、、などなど、目から鱗な内容です。
サンタクロースと、ファーザー・クリスマスの系譜が違うとか、初めて知りました。
聖ニコラス、ワイルドマン、ニッセ、クランプス、、、いろんなキャラクターの解説があって、現代のサンタクロースは商業主義の手垢にまみれたマスコットなんだな、ということがよくわかりました。クリスマス自体がそうとも言えます。
イギリスのクリスマスの定番、クリスマスクラッカーは、1846年にロンドンの菓子職人トム・スミスがフランスのボンボン菓子の包装をモデルに作ったそうで、その事業は大成功したそうです。
『クリスマス全史』を読んで、前よりもクリスマスについての理解が深まりました。
クリスチャンの友人が、「クリスマスはキリスト教徒だけのものではない。クリスマスはみんなのものだ」と言っていたのを思い出しました。