なる子とマーナル☆

少女の心を忘れない、なる子とマーナル☆によるアート・旅行・キッズ応援ブログ

【東京の奇祭】龍の縄にぐるぐる巻きにされて運ばれる男たち・「水止舞」と書いて「ししまい」と読む

日本全国、いろんな奇祭を見て回っているヘンな友人がおります。話を聞いているととても楽しいです。

そう、まだまだ知られざるお祭りが世の中にはたくさんあるのです。

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大阪万博公園・国立民族学博物館の展示より)

 

なぜか惹かれるお祭行事は、異世界感もあってたまりませんよね〜!

そういう変わったお祭りを「奇祭」と呼ぶことがあります。

 

東京にも面白いお祭、「奇祭」があるのです。浅草寺の白鷺の舞は有名どころですが、白鷺の頭を乗っけて、翼を広げて舞う姿は、江戸でありながら、「雅」なんて言葉が出てくるぐらい優美なものです。(みんぱくの写真に写っているのは、津和野の鷺舞、島根県のものです。鷺舞は京都の八坂さんが本家なのかな?)

鷺舞はみんぱくYoutubeでしか見たことがないので、一度は行ってみたいですね〜。でも浅草寺は観光地だから混んでいそう。

かと言って、地方のお祭りはアクセスが悪いところもあったり、なかなか面白いお祭りを見る機会はありませんよね。

 

いやいや、しかし、あるのです。しかも、東京23区内で!

 

【嚴正寺・水止舞】

東京に残る奇祭、水止舞は東京無形民俗文化財に指定されています。場所は大田区、大森エリア、京急本線「大森町」駅から徒歩10分のところにあるお寺・厳生寺です。はっきりとはわからないのですが、品川駅から続く「旧東海道」の道から延びるようにある道沿いのお寺なので、旅人もたくさん通り、文化も人も行き交う場所だったのではないかと思っています。

 

大きく分けると2部構成になっています。

 

「雨乞い」「雨止め」です。

 

雨は降らなきゃ困るんだけど、雨が降りすぎると途端に水害に見舞われていた多摩川デルタの海岸エリア。

雨乞いの起源は1321年、後醍醐天皇の時代、武蔵の国が旱魃に見舞われた時に郷民の嘆願を受け、時の住職・法密上人が稲荷明神の像を彫り、社を建て笑で龍神の形を作り、7日間の祈祷後、船を浮かべ流を波に沈め仏前に戻った上人が読経するとにわかに雨が降り出した、という伝説に由来します。

 

また、その2年後、今度は数十日間も続く長雨となり、田畑は水没。2年前の雨乞いのせいだと恨む者も出る始末。そこで上人は三頭の龍像を彫り「水止(しし)」と呼び、人々に冠むらせて「水止舞(ししまい)」を踊らせた。すると雲が消え、空は晴れ渡ったという。

 

以降、仏様への感謝の舞として水止舞が奉納されているそうです。

 

龍神伝説と真言密教。なかなかオカルトな背景ですが、日本がどういう国であるかを知る貴重なお祭ですね。雨乞いと雨止めが一緒になっているだけでも「奇祭」ですが、本当の「奇祭」っぷりはビジュアルでも見られます。

 

※現在の厳正寺は浄土真宗に改宗しています。

 

1、雨乞い儀式「道行(みちゆき)」

ご覧あれ。これぞ「奇祭」!

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なんじゃこりゃ〜!!

 

サザエ?

 

と思ったけれど、違うらしい。荒縄で作った龍神にぐるぐる巻きにされた男二人が雄龍、雌龍となって、法螺貝で雄叫びをあげているとのこと。

 

今年は雨の中スタート、いつもより距離を短くしたそうですが。

雨でも晴れでも雨天決行、この龍神に容赦なくバケツで水をかけまくる!!

荒縄にぐるぐる巻きにされ法螺貝を吹きならす。しかもめっちゃ水かけられる。

 

(近くで見ると自分もびしょびしょになるよ。)

 

地元の子供達も嬉しそうに水をかけていました。

 

そしてサザエ状の龍神たちは男衆に舞台へ運ばれていきます。

水も含んで相当重いんでしょうね。

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本来はこの後にお囃子が続き、パレードのようになるはずなのですが、今年は雨のため、変更したっぽいです。境内の舞台の上に並んでおりました。f:id:ma_naru:20190714211616j:plain

竹筒と扇を持った可愛い子供達は「警固」、花笠をかぶっているのは「花籠」「ささら」というギロみたいな楽器と笛の音、太鼓が心地よいお囃子です。

 

サザエみたいだった龍神は舞台の上で解かれました。しめ縄のように舞台の縁に設置されます。

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縄が舞台をぐるりと囲んで、龍神の頭が差し込まれました!

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2、「水止舞」世にも珍しい雨を止める踊り

 

「水止舞」と書いて「ししまい」と読むっぽい。しかし、お祭りの名前としては「みずどめのまい」と呼ばれています。花籠の二人はほとんど動かず「ささら」を奏でる。水色の着物には波の絵。「ささら」は稲穂が擦れ合う擬音らしいですが、ここで聞くと波の音のように感じます。

水止舞

 

雄水止、若水止が雌水止を巡って踊りを繰り広げる。この覆面のししまい、空気がこもって中は暑そうだし体力的にかなりきつそう。舞はなんと6部構成でほぼ踊りっぱなし。毎年7月14日。今年はまだ涼しい方だと思う。それでも辛そうで、倒れず最後までやり遂げるだけで賞賛ものです。

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羽飾りがかっこいい!

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舞に比べると唄がちょっと練習不足感あったりするけど、本当に見れて感激でした。

 

そして、この舞は長雨を止める為のもの。実は雨スタートで始まったのにもかかわらず、舞が始まると雨が止み、「あ、雨が止んだ。」と小さな呟きのような感嘆の声があちこちから聞こえてきました。祈りが届いたような。

雨止めが切実であった時代なら、本当に仏の力を感じたことでしょう。

3、舞の後は水止を頭に載せてもらう

「女性の方〜。どうぞ〜。」と声をかけてもらう。水止を頭に載せると頭痛が治るんだとか。女性は雄水止。男性は雌水止を載せるとご利益的なものがあるんだとか。

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(私じゃないです。勝手に載せてごめんなさい。)

 

4、龍神の藁

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なんと、こんなお土産までいただきました。

去年使った藁なんだそうです。

来年また持ってきてね、ということです。

 

水止舞は毎年7月14日(雨天決行) 午後1時から午後3時 です。

www.mizudome.com

 

異形の祭りをアートに

シャルル・フレジェというフランス人アーティスト、写真家がいます。彼は世界のユニークなお祭りや舞台の衣装を取り続けているのですが、日本のお祭りの衣装を撮影した「YOKAINOSHIMA」が最高です。まさに妖怪だらけで、日本文化の奥深さに触れることができます。日本って広いんだな〜。

 

とてもかっこいい写真ばかりで、見ているだけでドキドキします。

超おすすめだけど、アート本って少し高い。ちょっとオシャレな本屋には置いていることが多いので、パラパラと見てほしいです。何度見返しても楽しいので買う価値もあるかな、と。

 

 
ヨーロッパバージョンもあったりして、こちらももちろんおすすめ本です。