高齢の祖父がいるのですが、今はホーム暮らしです。痴呆も進んで、数秒前のことが思い出せません。目の前にいる私に「誰?」を繰り返します。
そんな祖父がちょっとボケ始めたかな、という頃、戦時中の話をやたらとしたがる時期がありました。どういう意図があったのだろう。やはり、伝えなきゃいけないと思ったのだろうか。工場で働く中学生だった祖父は、空襲から逃れ燃える工場と町を見ていたらしい。お家はどこにあったの?と聞くと、県庁所在地の駅前の道を指差した。
「あの辺りかな。」
整備され、広くなった道。
田舎だから道が広いのだと思っていた。焼け野原になった後、戦後の開発とか、なんか色々あったのだろう。東京大空襲とか大阪大空襲、広島、長崎、沖縄は今もよく聞くけれど、こういった地方都市だって空襲を受け、たくさんの人が心を痛めた。田舎だから戦中はなんてことなかっただろうと勝手に思っていたけれど、辛い思いをしたんだな。
戦争の記憶は年々薄れていくし、語り部は確実にいなくなる。
子どもたちに平和について考えてもらいたい時に、絵本は強い力を発揮します。
今回は平和について考える絵本を5冊紹介します
かわいそうなぞう
紹介するまでもないくらい読み継がれている本です。子どもたちにとって楽しいことだらけの動物園で、戦争によって悲しいことが起きた。人間の身勝手で動物たちを毒殺しなければいけなくなった上野動物園の実話を基にした絵本です。現代の子どもたちの心にも響くお話です。
トビウオのぼうやはびょうきです
小学校1年生の時にクラス担任が紙芝居で読んでくれたお話です。歴史をよくわかっていなかった私は戦争と広島の原爆の話だと長い間思っていました。
実際には太平洋沖、1954年ビキニ島水爆実験が題材になっており、灰を浴びて被曝したトビウオのぼうやの物語です。第五福竜丸というマグロ漁船も被曝してしまったことで、歴史に残るニュースとなっています。平和な日常を簡単に奪う核兵器の問題を弱っていくトビウオのぼうやを通して考えさせられます。
へいわとせんそう
谷川俊太郎さんだからこそ書ける短い言葉と、シンプルなイラストがマッチしています。最後には「同じ人間、同じ地球」なのにどうしてだろう、と考えてしまいます。
お父さんの地図
以前にも紹介したことがある本ですが、主人公の家族は戦争から逃れてきた難民です。作者の子ども時代を物語にした自伝絵本です。世界にはいろんな境遇の人がいるのだと、知るきっかけになるかもしれません。
せかいいち うつくしい ぼくの村
アフガニスタンの村を舞台にした絵本。生まれ育った土地のうつくしい所は自慢したくなりますよね。「せかいいち」なんて言われたら、「私の町だって海があるし!」「冬の雪景色はせかいいちだよ!」と対抗して自分の住んでいる場所のうつくしい所を思い浮かべてしまいます。
うつくしい、うつくしい日常が、最後のページで全部なくなってしまいます。