なる子とマーナル☆

少女の心を忘れない、なる子とマーナル☆によるアート・旅行・キッズ応援ブログ

La Biennale di Venezia ヴェネツィア・ビエンナーレ2022 ④ Arsenaleアルセナーレ

ヴェネツィアビエンナーレで外せないのがメイン会場の一つ、アルセナーレです。

中世の造船所跡が会場になっています。ここでは企画展示の「The Milk of Dreams」と各国展示ブースが入っています。

 

入場チケットが必要なのは、ここアルセナーレとジャルディーニ。基本のチケットでは、それぞれ1回ずつしか入場できませんし、どちらもじっくり見ていたら一日かかるので、朝から並ぶ人が多いです。

 

早く着き過ぎると誰もいません。

 

想定内です。

 

朝食をベニスのカフェでいただくのがよろしいのではないでしょうか。おほほ。

ピスタチオクリームのクロワッサンとカプチーノです。

 

そして、周辺でアルセナーレより1時間早く開館する無料で鑑賞できる国別展示があったりするので、そちらをささっと見て時間を潰します。

 

私が行ったのはホリデーシーズン前の6月平日なので、今はもっと混んでいる可能性が高いのですが、開館30分前に到着して、前から10番目くらいでした。

開館時間直前になると100人くらいは並んでいるように見えました。

チケット売り場の入り口は別で、そちらも並んでいました。

計画的に行動することをお勧めします!

 

The Mik of Dreamsの展示からスタートです。

 

入り口はシモーヌ・リー

 

 

作家名を書くのが面倒なぐらい作品数があるので、適当に気になった作品の写真を並べます。

 

 

このタコ宇宙人みたいなのは、なぜか色で性別を勝手に認識したような気持ちになった自分が怖くなりました。

いや〜、思い込みってありますよね。考えさせられました。



 

この日、午後の電車に乗る予定があった私は物凄い駆け足で鑑賞していたので、どこから国別展示に切り替わったか、思い出せません。。。

 

多分、この辺りからだと思うの。

 

これは、話題になったウクライナの漏斗の作品ですね。限られた資源が云々を表現しているとか。隣のブースとの相性が悪いです。それぞれ良い作品なのに。

 

とまあ、いろいろありまして、今回評判が良かったと言われているイタリア館です。

過去に栄えた産業の遺跡のような体感展示。ちょっと寂しい、「虚」の空間。前の人と距離を置いて入場するため、少し並びますが、この寂しさを体感するには必要な待ち時間ですね。

とある日本の作家さんの展示を思い出しましたが、アーティストをアーティストで例えるのは良くないな、と思ったので黙ってます。

 

メタバース空間を表現したという中国の展示も気になりました。

 

最後の最後の方で、カタツムリの殻とメラミンスポンジがエアホッケーしてるみたいな作品が好きでした。


もうちょっとゆっくり見たかったかな。

 

最初に入った入り口にショップがあるので、戻ってグッズを買いました。

トートバッグと缶バッジ。

 

これで、メインエリアの振り返りは終わりましたが、毎週月曜日は基本的にメイン会場はお休み。しかし、ビエンナーレ期間中は、周辺に国別展示が散らばっていて、月曜日も開いているところもあるし、他にも見どころがたくさんあるので、次回はその他エリアの紹介をしたいと思います。

La Biennale di Venezia ヴェネツィア・ビエンナーレ2022③ The Milk of Dreamsと女性アーティストたち

2022年のテーマタイトルは「The Milk of Dream」

この不思議なタイトルはレオノーラ・キャリントンというシュルレアリスムの女性アーティストの著書から引用されているそうです。

 

 

 

 

レオノーラ・キャリントン、、、ご存知ですか?

 

シュルレアリスムの画家と言えば、ダリ、マグリット、エルンスト、キリコ、などなど有名なアーティストがたくさんいます。日本でもシュルレアリスムの画家展は何度も企画されていると思いますが、特集されるのは男性アーティストばかりですよね。

 

実は、シュルレアリスムの画家には才能あふれる女性アーティストも何人か存在しました。シュルレアリスムだけではありません。印象派と呼ばれるグループにも女性作家はいたのです。

ところが有名になり評価されるのは男性ばかり。

 

現在の社会の流れと同様、現代アートの世界でも女性アーティスト、ノンバイナリーアーティストが注目されています。それは現代アーティストにとどまらず、過去を振り返って見直していくことが一つのトレンドだと言えます。

 

レオノーラ・キャリントンマックス・エルンストの元妻のひとり。恋多き男としても有名なエルンストですが、ピカソみたいに若い女に手を出したり、喧嘩している妻と愛人を見て楽しんだりする男と比べ、パートナーには自分のキャリアにプラスになる女性を求める傾向があったエルンスト。キャリントンのような才能のある女性との時間はエルンストのクリエイティビティに良い影響があったのだろうと想像できます。

 

もちろん、キャリントンにとってもそうだっただろうと思われます。

 

エルンストの歴代妻には、スーパー富豪で美術コレクターのペギー・グッゲンハイム、2019年にテート・モダンで特別展が開催されたドロシア・タニングらがいます。タニングは後にソフト・スカルプチャーの制作など現代美術につながる重要な作家となりました。



www.ma-naru.com

 

そしてレオノーラ・キャリントンも不思議な世界観の絵画を制作した人気の作家でした。男性優位社会の中で、女性作家は埋もれてきました。

日本でもなかなかお目にかかることはありませんが、実は過去に特別展が開催されたこともあります。

そして、私は若い頃その展示に遭遇しており、衝撃と影響を受けました。

当時買ったポストカード。

 

ジャルディーニ会場のセントラルパビリオンではレオノーラ・キャリントンの絵画だけでなく、彼女と仲の良かったレメディオス・バロの作品など、多くの忘れてはいけない女性アーティストたちの作品が展示されていました。

 

こうして、女性アーティストに注目が集まる時代の中で、2022年のヴェネツィアビエンナーレの参加アーティストの大半が女性となり、ノンバイナリーのアーティストも合わせると90%を超えたそうです。

 

あくまでも個人的な印象ではありますが、女性作家の方が、身体や自己、ジェンダーなど人間の内側に向き合う作風が多いように思います。一方、男性作家は社会など外向きが多いような。

そして、今回のビエンナーレでは3つの大きなテーマがあり、「The representation of bodies and their metamorphoses」、「the relationship between individuals and technologies」、「the  connection between bodies and the earth」ということなので、女性アーティストが多くなるのも自然なように思います。

 

2022年の金獅子賞は、ナショナルパビリオンでも印象的な作品を展開したシモーヌ・リーでした。

次回はこのシモーヌ・リーの作品からスタートするもう一つのメイン会場「アーセナーレ」の展示作品をダイジェストで振り返りたいと思います。

ヴェネツィア・ビエンナーレ②ジャルディーニ 国別パビリオン

メイン会場の一つ、ジャルディーニには国別の展示パビリオンが並んでいます。

このパビリオン群は一時的なものではなく、何度も繰り返し使う為、しっかりとした建物になっています。

 

例えばこちらはスペイン館。シンプルな煉瓦造りがかっこいい。

 

一方、こちらは金ピカのハンガリー館。


そして、セントラルパビリオンという建物があり、こちらでは国別展示ではなく、ビエンナーレのキュレーターによる「Milk of Dream」が開催されていました。この特別展はもう一つのメイン会場アーセナーレにも続きます。

 

 

国別パビリオン

ここからはいくつかピックアップ

 

ベルギー館/フランシス・アリス「The Nature of the Game」

今回私が一番見たかった作品。2017年にはイラク館で展示をしたフランシス・アリスですが、ベルギー生まれという縁からでしょうか、ベルギー館での出展です。

パビリオンの中にはたくさんのモニターが、世界中の子どもたちの遊び(Game)を映し出しています。

音で虫を呼ぶ遊びをするサバンナの子どもたち。廃屋で鏡を使いながら、バトルごっこをする男の子たち。ひたすらにタイヤを転がし続ける子。縄跳び、カタツムリゲーム、、、など。

どんな状況下であっても、子どもたちの遊びに向かう好奇心やエネルギーは共通するものを感じます。フランシス・アリスは社会問題と日常を同時に捉える印象的な作品を多く発表しています。

世界には戦争や移民問題などがあります。またコロナで私たちの日常も変わってしまいました。そんな中、子どもたちの「遊び」の様子はずっと見ていられるし、癒されます。しかし、ふと、この子どもたちの「日常」の背景にあるものを考えた時、様々な課題に大人は直面するのではないでしょうか。

好きな作家ということで贔屓目が強めですが、良かったです。

 

ポーランド館/マウゴジャータ・ミルガ・タス

パッチワーク刺繍の作品でロマの生活を描いています。

 

ギリシャ

ギリシャ館もロマをテーマにした作品で、VRで鑑賞するタイプでした。座席数が限られていて、すごい行列です。ロマ自体が日本で暮らす私にとっては遠い存在で、いまいちピンと来ませんでした。炎天下で待つことで疲れてしまい、VRは半分以上寝てしまった。。。

時間のない人はここはスキップして、もっと見たいところでじっくり過ごすことをお勧めします。

 

セルビア館/マリヤナ・コラリッチ

海とプールの映像作品

圧倒的な水量って良いですね。特にプールの作品でそう感じました。

 

ハンガリー

モカワ彫刻インスタレーション

 

韓国館

今回人気だったパビリオンの一つではないでしょうか。キネティックな作品ですが、色も変化させながら、うねうねと動く様子に目が離せなくなってしまいます。

 

アメリカ館/シモーネ・リー

スーパースター街道まっしぐらのシモーネ・リー!

シンボリックで巨大な女性像は、プリミティブかつモダンで美しいです。

 

アメリカ館では初めて黒人女性作家が選出されたそうです。

白人社会のアートプラットフォームとして存在し続けたビエンナーレに新しい風は吹いているのでしょうか。

シモーネ・リーは、個人で今年のビエンナーレの金獅子賞を受賞しています。

 

日本館/ダムタイプ

日本館は最近再評価されているっぽいダムタイプの展示でした。

 

ドット文字は懐かしくて、もはやデジタルではなくアナログ感さえありますよね。

隣の韓国館のインパクトも大きいせいか、印象に残りにくい展示でした。平成初期ぐらいにあった、各国から見た日本のSF感にも届かない。ちゃんとメッセージ読めば印象は変わったのかもしれないけれど、疲れて読む気になりませんでした。日本のパビリオンだからしっかり見たかったのだけれど。

 

世界のトレンドとしては、自国が置かれたシチュエーションであったり、自国内にあるマイノリティの存在にフォーカスしているものが多かった印象です。

 

とすれば、ジェンダーギャップランキング世界116位、アイヌ、沖縄、経済格差、政治の歪み、いくらでも切り込めるところはあるのに、アートに表出しない全体的な弱さがあるんだろうな。

 

そんなわけで各国に比べると若干物足りなさを感じました。

 

 

ウクライナ広場

特設された土嚢のモニュメント。戦火の耐えないウクライナで、実際にこのような積み上げられた土嚢があるそうです。街中に元々あるモニュメントを守ろうと土嚢で囲んでいるそうです。どれだけ効果があるのかわかりませんが、パブリックアート的なものを守りたいという気持ちが伝わりますね。

 

ロシア館

今回は参加辞退を表明したロシア館。覗き込むと見える放置された資材が寂しげ。

 

紹介したのは本当に一部のパビリオンです。

では、セントラルパビリオンについては次回!

 

La Biennale di Venezia ヴェネツィア・ビエンナーレ2022① 準備編

世界的現代美術の祭典

ヴェネツィアヴェネチアベネチア、ベニス 、ヴェニス、、、どれが一番しっくり来るのかよくわからなかったので、wikipediaヴェネツィア表記にすることにしました。

 

1895年から続いており、コロナで延期もありましたが今回が59回目。ビエンナーレとは2年に1回という意味です。イタリアの水の都ヴェネチアで開催されていて、建築部門や演劇部門とかもあるらしいのですが、私にとってはヴェネツィアビエンナーレと言えば、「現代美術の祭典」です。

 

今年はヨーロッパはコロナとの共存が始まって、数々のイベントが延期を経て開催。ビエンナーレはもちろん、ドイツ・カッセルで開催されるドクメンタ(5年に一回)、今年は通常開催となった世界的なアートフェア、スイスのアート・バーゼル(毎年)、これらが同年開催となる珍しい年ということで、世界中のアートファンがヨーロッパに集まっていると言います。

 

私は、どうしてもドクメンタに行く時間が取れず残念でしたが、ビエンナーレとアートバーゼルには行っていました。

 

本当に盛り沢山なのでどうしようかと思いますが、数回に分けてレポートしたいと思います。

 

今回はビエンナーレの第1回。

 

会場について

メイン会場は有名なサン・マルコ広場よりもずっと東側の方にあります。

ジャルディー二アーセナーレという二つのメイン会場で展示があり、この二つはチケットによる入場となります。また、ヴェネツィア中に関連展示が点在します。大体無料です。そして、もちろんビエンナーレに合わせて各美術館やギャラリーも目玉展示(有料)をぶつけてくるので見どころでいっぱい。見るのに何日必要かと聞かれたら、最低2日と皆口を揃えて答えるでしょう。

 

基本的な情報はホームページで確認。2022年の会期は4月23日〜11月27日。

一部の日程を除き、メインの2会場は基本的に月曜休みです。(要注意)

www.labiennale.org

 

ジャルディーニ

広い公園が会場です。この公園内には、主に各国のパビリオンがあります。それぞれ国のキュレーターが独自の展示を展開します。日本館もあります。国際的な祭典に自国のパビリオンがあるのは、なんだか嬉しい。このエリアは老舗の参加国が中心なので。

各国のパビリオンの他に大きな展示館があります。ここはビエンナーレの企画展示室です。

 

アーセナーレ

ながーい倉庫のようなスペースがアーセナーレの会場です。こちらはキュレーターによる企画展示が中心です。地元のイタリア館、そしてジャルディーニにパビリオンを持たない参加国が、アーセナーレの一部を間借りして展示しています。

 

その他、街中

街中のあちこちに会場があり、美しい邸宅をそのまま展示場にしているところもあるので、普段のベネチア観光では見れない場所にも入ることができます。

 

どこからダウンロードしたのか忘れてしまいましたが、こちらに全エリアの地図があります。

https://static.labiennale.org/files/arte/Documenti/brochure-arte-2022-c.pdf

開館時間は予告なく変更になりこともありますが、月曜日に開いているところもあるので、もし旅の日程が月曜日を含むようであれば、要チェックです。

 

ちなみにこの地図の入ったパンフレットは、わざわざ言わないともらえないのかわかりませんが、ついぞ紙バージョンを見かけることはありませんでした。どこにあったんだろう…。

 

スマホで確認しながら巡っていると、バッテリーの消費が早くて困ってしまったので、地図部分だけ事前に印刷して持っていくと良さそうです。

 

チケット

各種割引などありますが、基本的には大人1名25.5ユーロです。

ネットで購入することもできますが、現地で購入可能です。

私はジャルディーニのチケット売り場で買いました。昼ごろだったので空いていましたが、朝一番は並んでいると思います。

朝一にチケットの列と入場の列ができるので、チケットを買ってからまた入場の列に並ぶとかなり時間がかかると思います。チケットを持っていれば、入場の列に並ぶことができますが、みんな考えることは同じなので、開場5分前ぐらいには100名くらい並んでると思っていいと思います。

 

ちなみに私はアーセナーレの会場に30分前に着いて前から10番目くらいでした。後ろは大行列でした。

 

チケットにはバーコードが印刷されていて、ジャルディーニ、アーセナーレで各一回ずつ入ることができます。

どちらの会場もじっくり見れば1日でも足りないぐらいなので、2日に分けて鑑賞する人がほとんどだと思います。

 

では、次の記事から会場と展示作品について記録していきたいと思います!

長くなりそう〜。

バイエラー財団美術館 Fondation Beyeler

 

 

バイエラー夫婦の美術館

バーゼル郊外にあるバイエラー財団美術館はバーゼルに来たら絶対行けと言われる美術館の一つです。元々アートディーラーだったバイエラー夫妻が蒐集した世界の名品が250点以上コレクションされているそうです。美術館建築は、ポンピドゥーセンター、関西国際空港を手掛けたレンゾ・ピアノによるもの。あの関空の中のピンクみたいな色好きじゃないけど、屋根の構造とか関空もかっこいいな〜って思う瞬間ありますね〜。

 

さて、この美術館建築は、本当に美術展示のために設計されていて、すごく良かったです。

外観はそんなに派手じゃないんですけど、中に入った時の心地よさがたまりません。

 

展示室の真ん中によくベンチが置いてあることがありますが、ここはあまり展示室に置いておらず、建物の外を眺めることができる場所にたくさんベンチやソファが置いてあります。

関連書籍もあったりしてゆったりしています。

 

郊外の緑豊かな風景に癒されます。


庭に面しているベンチも。ちょっと怖い噴水彫刻が見えます。

こういう場所が各所にあって、ぐるぐる回遊しながら時々休んだりできます。

 

お庭には彫刻作品がいくつかあるだけでなく、可愛い建物のレストランなどもあります。

 

コレクション展

入場料は25CHF。企画展も含む値段ですが、円安も手伝って約3300円です。

残念ながらスイストラベルパス、ミュージアムパスは使えません。

 

ピカソ、ルソー、モネ、ゴッホセザンヌジャコメッティ、ロスコ、リヒターなど。印象派から近現代アート中心のコレクションは名作揃いです。

 

今、一番はじめにお出迎えしてくれるのはこの作品

アンリ・ルソー『飢えたライオン』Le lion ayant faim se jette sur l'antilope

縦2メートル、横3メートルの巨大ルソー…。迫力。かもしか…には見えないけれど、怯えて血の気が引いて目から光が消えていくような感じはします。あ、モデルは博物館の剥製だからライオンも死んでたと思いますけど。

この絵はミュージアムショップの目の前なのですが、長いソファがあって、多くの人がくつろいでいました。

 

さて展示室ですが、「嘘でしょ?」って思うぐらい贅沢な空間使いです。

モネ『ルーアンの大聖堂』

ん?これってバーネット・ニューマンだっけ?

部屋広すぎて絵が小さく見える。

 

ベーコンの部屋

モネの大聖堂の絵が贅沢な空間を使っていてびっくりした後に、壁一面埋める勢いの巨大睡蓮が登場しました。

もはや、なんじゃこれ状態。モネが描いたのは本当にただの『睡蓮』なの?

とにかく巨大なモネの『睡蓮』

同じ部屋の向かい側にはゲルハルト・リヒターの作品がずらり。

モネの向かいにリヒター!

絵具を引きずったようなリヒターらしい作品も置いていましたが、写真を撮り忘れたみたい。

リヒターは現代アートの生きる巨匠(今年90歳)ですが、ゴテゴテの絵具の具合とか、目の前にモネがあると、ついつい比べてしまうし、なんだかモネの凄さが際立ってしまう。

 

モネXリヒターの組み合わせは最近よく見かけるような気がします。誰か有名な評論家が何か言及したんでしょうか?

とにかく同じ部屋にこの組み合わせがあるのはしびれました。

 

コレクション展では、ゴヤの『戦争の惨禍』の版画シリーズもありました。

ゴヤ『戦争の惨禍』

ゴヤが目撃した戦争のリアルな悲劇が描かれています。横の解説文ではキュレーターからの言葉で、ウクライナ侵攻に反対するということが書かれていました。

 

特別企画展『ジョージア・オキーフ

なんとなく、女性アーティストの展示をよく見る気がします。

何度も展示されている男性アーティストよりも、大回顧展の機会がこれまで少なかった女性アーティストの方が目新しさがあるのかもしれませんし、ジェンダー平等を意識したときに女性アーティストを選んだのかもしれません。

花を拡大した作品で有名ですよね。

山の絵もたくさん。

オキーフの作品がたくさん見られるだけでなく、その一生や人柄も見えてくるような展示でした。

 

 

 

次の展示はモンドリアン

6月からモンドリアンの展示が始まるそうです。

うわ〜〜〜〜、見たい〜〜〜〜。もう一度25CHF払うの?きつぅ〜〜〜〜。

 

でもバイエラー財団ではモンドリアンの研究もしているっぽいのです。

モンドリアンは木などの自然物を描いているうちにだんだん要素が凝縮されてあのモダンな絵画になっていったという謎のアプローチで現代アートになっていった謎アーティスト。

絶対面白いじゃん。

 

そんなこんなんで、やはりバーゼルは少数の金持ちのおかげで現代アートの街になっていることを実感できる美術館でした。周りものんびりした風景が広がっていて素晴らしいです。

ドイツとの国境、ヴァイス川を越えながら1時間くらい歩けばヴィトラ・デザイン・ミュージアムです。丸一日使ってアート・デザイン三昧もいいと思いますよ〜。

www.fondationbeyeler.ch

 

【聖地】ヴィトラ・デザイン・ミュージアム Vitra Design Museum

 

ヴィトラ・キャンパス

バーゼルで建築巡りをしようという人が、必ず足を運びたい場所、それがヴィトラ・デザイン・ミュージアムです。正確にはスイスのバーゼルではなく、国境を越えてドイツ領のヴァイル・アム・ラインにあります。ここにはインテリア業界で世界屈指のブランド、ヴィトラVitra社の工場施設があり、その敷地一体をヴィトラ・キャンパスと呼び、ミュージアムなどが併設されています。

 

ちょっと待って!

ミュージアム「など」とは…

 

・フランク・ゲーリーミュージアム

安藤忠雄セミナー・ハウス

・ザハ・ハディッドの消防署

・アルヴァロ・シーザの工場

・ジャン・プルーヴェのガソリン・スタンド

・カールステン・フラーの滑り台

リチャード・バックミンスター・フラーのドーム・テント

ヘルツォーク・ド・ムーロンの複合施設Vitra Hausと、イームズをはじめとするインテリアのコレクションが展示されるVitra Schaudepot

 

など。

 

そうです。ここは建築パラダイス。建築ファンにとっては建築の聖地とも言える場所です。

どんな建築があるか、詳しくは公式サイトをご覧ください。写真付きで見ることができます。

www.design-museum.de

 

もちろん工場など見れない部分はありますが、有料で入れる展示と、ショップやカフェ、ガーデンもあって一日たっぶり過ごすことができます。私が行った時も祝日だったため、多くの人が訪れていました。車で行くのが一番楽ですが、バーゼル駅でトラム8番に乗って終点から歩くのもアリだし、時間があるならバイエラー財団美術館に行ってから、ウォーキングも良さそう。郊外なので気持ちいいし、良い運動になると思います。徒歩50〜60分くらい。

では、主な見どころを紹介します!

 

ヴィトラ・デザイン・ミュージアム

Vitra Design Museum:Frank Gehry

中では特別展が開催されていました。「Plastic : Remaking Our World」展。プラスチックをテーマにした展示です。私たちの生活を便利にしてくれるプラスチックですが、同時に海洋ゴミなど、深刻な問題も引き起こしています。プラスチックの歴史と、これからの解決方法を模索する試みを展示する内容になっています。

 

 

ゴミで溢れる廃棄場や海など、多少ショッキングな映像も出てきますが、ほぼ人間が映らないので、あまり感情的にならずに済むようになっていたかと思います。日本も資源ごみの処理を海外に押し付けていたりする現実があるので、現状の問題は大変複雑なことはわかっていますが、この展示では社会問題には大きく触れず、素材から解決策へ導く可能性と方法を展示する内容だったと思います。このあたりがデザインの良さでもあり、ずるい所でもあるな、と思ってしまいました。なんか、デザインやっている人はカッコよく見えるし正義っぽい。泥臭い部分は他に押し付けているようにも感じてしまうんですよね。

 

とは言え、やはり、デザインができることを示すことには意味があります。プラスチックを生み出してしまったのは先進国です。環境負荷の低い素材を研究開発することはお金のかかることだけれども、率先して資金のある国や人、企業がすべきことでもあるなと思いました。プラスチックゴミで溢れる国やエリアを非難するのではなく、新しい方法を提案し、実行し続けること、それが大事なんじゃないかと思いました。

 

新素材の開発やプラスチックのリサイクルの展示は、触ってみたい気持ちを抑えるのがとても大変でした。

 

ミュージアムの前には、展示でも紹介されていた、一目で水が出そうとわかる給水機がありました。

My水筒に水を汲むことができる

スイスは水が綺麗で豊富なので、街のあちこちに噴水があります。これは鑑賞用として作られたものではなく、元々は生活用水の為なのだと思いますが、今でも普通に飲めるようです。

水槽ではなく蛇口の方から水を水筒に入れて飲んでいる人を見かけることもあるので、大丈夫。

 

外から見た奇抜感と中の様子はなんだか少し違います。

意外に大人しいというか…。ちゃんとホワイトキューブな感じの展示室でした。

螺旋階段がいいですね。

建物も裏側から見ると丸みのある場所は階段なんだな、と納得です。意外に機能的な作りなのかも。

不思議な建物でした!

 

ヴィトラハウス

わー!イームスチェアが観覧車みたいに回ってる!!

VitraHaus :Herzog & de Meuron


ここは無料で入れる施設で、カフェ、ショップ、子どもたちの遊び場などがあります。

オーダーメイドで椅子が作れるショップ

そのショップの外壁はベンチになっている

ショップにも可愛いものがたくさんあって、欲しくなりました。値段表記がわかりにくく、いくらなのか結局わからなかったものもあり、買わなかったですが、見ているだけでも楽しいです。


ヴィトラ・スライド・タワー

Vitra Slide Tower : Carsten Höller

楽しい滑り台!安全のため、布の袋のようなソリで滑ります。そのままだとお尻が焼けてしまいますよね。今回は子どもたちが楽しんでいたので滑りませんでしたが、一度ロンドンのテートモダンにフラーの滑り台が設置されたことがあり、滑ったことがあります。結構スピードが出て楽しかったです。

ヴィトラ・シャウデポ

Vitra Schaudepot : Herzog & de Meuron

「Schau」(見る)「depot」(倉庫)

言葉は少し違いますが、Schaulagerとほぼ同じ意図を感じますね。

 


こちらも同じ建築事務所が設計していて、貴重なインテリアデザインのコレクションを見せる倉庫となっています。

 

地下にはイームズチェアなどが大量に棚に積まれています。

ガラス張りで覗き込むだけです。

 

オフィスを再現した場所もありました。(ガラス張り)

イームズ・オフィス

一階奥ではメキシコの建築家の特集企画が展示されていました。

1階の展示エリアでは、グラデーションになるように椅子が展示されておりました。

 

椅子っていうか、もはや彫刻…みたいなものもある。

 

ドーム

テントのドームがガーデンの向こうに見えます。

Dome : Richard Buckminster Fuller

明るいのですが、もうこの時点で17時半過ぎなんですよね。

実はバーゼルの街中から40分ぐらいかけて自転車で来たので、結構もうヘトヘトだったのです。ちょっと、近づいてよく見る体力がもうありませんでした。

 

デザインの道標

自転車で来た人も、トラムで来た人も最後まで楽しめるのがコレです。

Vitra Designweg : Ronan and Erwan Bouroullec

自転車に乗りながら適当に撮ったのでちゃんと写っていませんが、中にミニチュアの椅子のオブジェが入っているんです。可愛い〜!欲しくなる〜!道沿いにこの小さな展示室が何個も設置されています。来る時も帰る時もこの標に沿って行くとトラム駅とヴィトラの間を楽しく行き来できますよ〜!

 

しかし、vitraのミニチュア名椅子シリーズ、どれもうん万円以上のお値段でびびる。本物はいくらなんですか…。


 

【巨匠のステンドグラス】チューリヒ・二つのミュンスター


チューリヒ旧市街エリアに、ミュンスター橋を挟んで二つのミュンスターが建っています。

フラウミュンスター(Fraumünster)とグロースミュンスター(Grossmünster)です。

フラウ・ミュンスター

グロース・ミュンスター

どちらも立派です。

この二つのミュンスターでは、ちょっと珍しいステンドグラスを見ることができます。

 

フラウミュンスター

フラウミュンスターは入場するのに5スイスフラン

中はシンプルな装飾ですが、奥の縦長の5つのステンドグラスの窓はシャガールが描いたもの1970年作だそうです。建物が中世のゴシック様式なので、ちょっとびっくりする組み合わせですね。

シャガールのステンドグラス

 

色づかいもシャガールらしさが出ていていいですね。

ステンドグラスは写真に撮るの難しい。

 

どういう経緯でシャガールが制作することになったのかわからないですが、

制作謝礼費はたった1組のご夫婦が払ったそうです。スイスはお金持ちが芸術を支えているとわかるエピソードですね。

シャガールのバラ窓

天井にはカラフルな星々が描かれています。一つだけ金色の星がありました。かの有名なベツレヘムの星を表しているのでしょうか。

 

また1940年製、ジャコメッティの9mステンドグラスもあります。

ジャコメッティのステンドグラス

この教会では地下に小さな展示室があり、地下空間の様子や関連資料を見られるようになっていました。

 

グロースミュンスター

こちらは塔に登るのは有料ですが、普通に入る分には無料です。ただし、写真撮影は禁止。中にはフラウミュンスターのデジャブかと思うようなジャコメッティのステンドグラスが。ジャコメッティのステンドグラスはちょっと暗くて何描いているのかわかりにくい。ジャコメッティの作品はかっこいいと思うけど、果たしてステンドグラス向きか…!?

私は明るいステンドグラスの方が好きかもしれない。

 

このミュンスターの面白いところはジャコメッティ以外もたくさんのアーティストがステンドグラスに参加していること。絵本のようにかわいいものもありました。

 

印象的だったのが、宝石のような鉱石をスライスした断面をつなげてステンドグラス窓にしていたこと。

 

Wikipediaに写真があったのでぜひ見てください。とても綺麗。自然系の博物館にありそうだけど、教会で見るとまた違った印象です。

en.wikipedia.org

グロースミュンスターは外部の装飾がユニークでかっこいいので、じっくり見ると楽しいと思います。

 

ダダが生まれた街

教会でも近代アートが楽しめるチューリヒは、やはりアートの街と言っていいですね!

中でも前衛芸術運動ダダイズムが生まれた街として特筆すべきかもしれません。トリスタン・ツァラハンス・アルプらダダの拠点として多くの人が集まったそうです。キャバレー・ヴォルテールがその場所ですが、今は取り壊されたかでありません。

 

ネオ・ダダと名乗る人たちのムーブメントでキャバレー・ヴォルテールはカフェ・バー&アートスペースとして復活したようです。

キャバレー・ヴォルテール

今回は入らなかったので、中の様子をお伝えできませんが、賑やかなエリアにあるので、観光の時にちょっと立ち寄ってみることもできます。ダダ好きの方はぜひ。

 

え?ウルトラ怪獣

いませんよ。

 

(名前はダダイズムから取ったらしいけど)