2022年のテーマタイトルは「The Milk of Dream」
この不思議なタイトルはレオノーラ・キャリントンというシュルレアリスムの女性アーティストの著書から引用されているそうです。
レオノーラ・キャリントン、、、ご存知ですか?
シュルレアリスムの画家と言えば、ダリ、マグリット、エルンスト、キリコ、などなど有名なアーティストがたくさんいます。日本でもシュルレアリスムの画家展は何度も企画されていると思いますが、特集されるのは男性アーティストばかりですよね。
実は、シュルレアリスムの画家には才能あふれる女性アーティストも何人か存在しました。シュルレアリスムだけではありません。印象派と呼ばれるグループにも女性作家はいたのです。
ところが有名になり評価されるのは男性ばかり。
現在の社会の流れと同様、現代アートの世界でも女性アーティスト、ノンバイナリーアーティストが注目されています。それは現代アーティストにとどまらず、過去を振り返って見直していくことが一つのトレンドだと言えます。
レオノーラ・キャリントンはマックス・エルンストの元妻のひとり。恋多き男としても有名なエルンストですが、ピカソみたいに若い女に手を出したり、喧嘩している妻と愛人を見て楽しんだりする男と比べ、パートナーには自分のキャリアにプラスになる女性を求める傾向があったエルンスト。キャリントンのような才能のある女性との時間はエルンストのクリエイティビティに良い影響があったのだろうと想像できます。
もちろん、キャリントンにとってもそうだっただろうと思われます。
エルンストの歴代妻には、スーパー富豪で美術コレクターのペギー・グッゲンハイム、2019年にテート・モダンで特別展が開催されたドロシア・タニングらがいます。タニングは後にソフト・スカルプチャーの制作など現代美術につながる重要な作家となりました。
そしてレオノーラ・キャリントンも不思議な世界観の絵画を制作した人気の作家でした。男性優位社会の中で、女性作家は埋もれてきました。
日本でもなかなかお目にかかることはありませんが、実は過去に特別展が開催されたこともあります。
そして、私は若い頃その展示に遭遇しており、衝撃と影響を受けました。
当時買ったポストカード。
ジャルディーニ会場のセントラルパビリオンではレオノーラ・キャリントンの絵画だけでなく、彼女と仲の良かったレメディオス・バロの作品など、多くの忘れてはいけない女性アーティストたちの作品が展示されていました。
こうして、女性アーティストに注目が集まる時代の中で、2022年のヴェネツィア・ビエンナーレの参加アーティストの大半が女性となり、ノンバイナリーのアーティストも合わせると90%を超えたそうです。
あくまでも個人的な印象ではありますが、女性作家の方が、身体や自己、ジェンダーなど人間の内側に向き合う作風が多いように思います。一方、男性作家は社会など外向きが多いような。
そして、今回のビエンナーレでは3つの大きなテーマがあり、「The representation of bodies and their metamorphoses」、「the relationship between individuals and technologies」、「the connection between bodies and the earth」ということなので、女性アーティストが多くなるのも自然なように思います。
2022年の金獅子賞は、ナショナルパビリオンでも印象的な作品を展開したシモーヌ・リーでした。
次回はこのシモーヌ・リーの作品からスタートするもう一つのメイン会場「アーセナーレ」の展示作品をダイジェストで振り返りたいと思います。