『城の崎にて』『暗夜行路』などのヒット作を始め多くの小説を残した白樺派の作家、志賀直哉は引っ越し大好き23回。生まれは石巻、学習院に通っていた頃には東京、その他は我孫子、尾道、京都、鎌倉、奈良高畑、熱海などなどなど。
見学できるところも数箇所ありましたが、尾道の記念館は令和2年に閉館。
そんな中、奈良市高畑にある旧居は保存修復され公開されています。引っ越し好きのこだわりが詰まった面白い家ですよ!
志賀直哉旧居(学校法人奈良学園セミナーハウス)
奈良県指定有形文化財に登録されています。新薬師寺が近くにあるエリアです。
見学料は350円。
1929年(昭和4年)に数奇屋建築の大工に依頼して建てた家で、その後9年間過ごした場所。ちょうど子育ての真っ最中の時期でした。
志賀直哉は初めての子どもを生まれてすぐ亡くしてして以来、6人の子ども達のことをとても気にかけていたと言われています。そんな志賀直哉の思いが込められた家はまさか昭和初期にこんな!?とびっくりするような子育てのためのアイデアに溢れた邸宅です。
2階の部屋は見晴らしがよく、若草山の眺望あり。尾道や我孫子の旧居や城崎で滞在した旅館の様子を見ても景色の良いところで執筆活動するのが好きだったようです。
春日山の原始林も近くに広がり、風光明媚。お屋敷が立ち並び、文化人が集まる土地柄です。
(庭は3つあり、池のある日本庭園、茶室に面した中庭、サロンの前の超広い庭があります)
北側の少し暗めの一階の部屋は夏の書斎として使っていたようです。贅沢!
数奇屋建築からの、天窓があるとても明るいサンルーム。美しい和洋折衷。奥には広いダイニングルーム。画家や作家が集まり「高畑サロン」と呼ばれていたそうです。
出窓風の仕切りがとても良い。
数奇屋建築が得意な大工が作りたがったので作った茶室。妻と娘が手習いに使ったそうです。天井が低い!
水屋も洒落てる。
子育てのアイデア
さて、子ども部屋ですが、まず8畳の子どもの寝室と6畳の志賀直哉の部屋は襖で仕切られているもののすぐ隣にあり、子ども達の様子がすぐわかるようになっていました。
その隣には勉強部屋があるのですが、、、写真がわかりにくくすみません。
奥の明るい2部屋は本棚があり、個室でありながらお互いの顔が見えるように障子窓が開くようになっています。
手前の部屋は「勉強部屋」となっていますが、むしろこちらは遊び部屋。8畳ほどの広さがあり、コルクタイルになっています。元気に遊んでも衝撃吸収!
え?昭和初期だよね!?
コルク!!遊ばせるために!!
しかも直哉の寝室を通らず子供部屋に通じる小部屋(踏込み)の壁面の足元に小さな引き戸がついていて、色んな意味でこちらも風通しが良い。母の部屋はサロンと子ども部屋の間にあり、合理的。かつ、父の寝室ほど簡単に行き来できないので母が子ども達の生活に干渉しすぎない配置。どこにいてもお互いの気配を感じつつ、程よい距離を保てるようになっているのです。
そして、こども達の部屋からすぐに飛び出せるのが、この広い庭。
走れる〜〜!!
しかもこの庭には、私が「何これ?消火槽?」と思って写真を撮らなかった小さなプールがあります。
大人が使うには小さいけれど、子どもなら十分なサイズです。
志賀直哉邸すごすぎる。
これが成功者の子育て!(笑)
こんな素敵な家ですが、志賀家は東京に引っ越します。
無事大きくなった男の子は一人だけ。その子の進学のために転居(!)するのです。また、引っ越しは志賀直哉にとって執筆活動のための良い刺激だったようなので、転機の時だったのでしょう。私なら永住したいですが。
今でこそ、子育ては「母のもの」と言う考えから「父母二人のもの」と社会が変わってきていますが、志賀直哉は随分子育てに関わっているように見えます。日本の子育ての一般意識が「母のもの」になって行ったのは明治大正あたりからのようです。それまで、江戸時代では、特に男子の教育は父親の責務だったと言っていいと思います。そういう視点から見ると、志賀直哉の教育熱心さは最先端にも見えるし、武士的な父としての責任感があったようにも見えます。
いや〜、芸術、古美術などに造詣が深かった志賀直哉らしいとても素敵な豪邸でした。
あまりにも凄すぎて一般家庭では真似できることがほとんどないですね。部屋数がそんなにないし、広い庭も難しい。
強いて言うなら、コルク床。
コルクの床は、使いやすいジョイントタイプのマットがたくさん売っているので、お子さんが小さいうちはオススメ。甥っ子の誕生祝いにプレゼントして使ってもらっていますが、裸足に優しいと好評です。
肌触りも良いし、心に優しい感じがします。
汚れに強いポリエチレンのタイプが安いし人気だと思いますが、断然コルク推しです。
公共施設とかでも、子ども達がくつろぐ場所でジョイントマット使うなら、できればコルク使って欲しいと思っています。予算問題はあるけれど。
ご家庭でも、どうせ使い捨てと思うなら、ぜひコルクにして欲しい。見た目がいいとか防音になるとかだけではない、それ以上の価値があると思いますよ!