2022年は、コロナで中止や延期になっていたアート・バーゼルinBaselがいつも通りの時期に開催、さらに2年に一回のベネチアビエンナーレ、5年に一回のカッセル・ドクメンタなど、コロナでズレたイベントも同年開催になるということで、アートファンがヨーロッパに集結しているようです。
さて、もう終わってしまったイベントですが、バーゼルで開催された「アート・バーゼル2022」の様子をダイジェストでリポートしたいと思います。
アート・バーゼルとは
アート・バーゼルとは簡単に言うと、世界的に有名なアート・フェアです。アート・フェアが何かって言うと、ギャラリーがブースの賃貸料を払って出店し、アート作品を売る!というイベントです。
アート・バーゼルはスイスのバーゼルの街で始まりましたが、ビジネスを拡大し、マイアミや香港などでも開催されています。そこで、人々はそれぞれをこう呼びます。
バーゼル・マイアミ、バーゼル・香港、そして…バーゼル・バーゼル。
わけわかんないですよね。全部地名だし。
日本で「今度バーゼル行くんだ〜」と売れっ子画家の友人に言うと、「へ〜、いいなぁ!どこの?」と言われたことがあります。「いやいやアート・バーゼルじゃなくて…シンプルにスイスのバーゼル…」と話が噛み合わなかったこともあります。
噂によるとバーゼル・パリが新たに始まるそうです。
バーゼルから近い分、より一層わけわかんなくなりそうですね。
そんなわけで、今回私が行ったのはバーゼル・バーゼルですよ〜!
トラムは会場の目の前に停まります。超便利!
アート・バーゼル、Unlimited
バーゼルのアート・バーゼルでは、会場が2つあります。国際見本市などに使われるメッセという建物のHall1ではUnlimitedが開催されます。
Unlimitedは、アートバーゼルの特別展覧会のようなもので、天井の高い大きな空間にたくさんのアーティストが展示しています。ラッキーにも手に入ったVIPカードで初日に行ってきました!
こちらは巨大なタペストリー
フェルト(羊毛)にプリントされたカツラや付け毛の写真(もしかしたら絵かもしれない)
大人気のレベッカ・ホルンの蜂の巣をモチーフにした作品。時々ブロックがガシャーンと落ちてきて鏡を砕くインスタレーション。
Jan Dibbetsは写真と数学をベースにしたアーティスト。もうおじいちゃんですけど、2018年の作品。結構最近!若々しい!
大きい作品が映えるUnlimited
神秘的で、仕組みがわからずじっと見てしまう不思議な作品
20世紀の共産主義のモニュメント的なイメージと近未来をミックスさせたような不思議な絵画。上海のアーティストの作品ということも合わせて興味深い。
はいはい、絶対かっこいいティルマンズ。今回もかっこいいです。仕方ない。
大好き。レイチェル・ホワイトリード。
ちょっと弱いところ見せるスーパーマンの連作も印象的でした。
フランシス・アリス。いろんな国や地域の境にある柵や壁を描いた作品。ベネチア・ビエンナーレで展示していた、世界の子供たちの遊びの動画と合わせて見ると彼が伝えたいことがわかりやすい。Unlimitedとは言えアート・バーゼルの方がわかりやすいってところがビジネス臭ありますね。アーティストがどうやって資金を得ているか、このバランス感覚もフランシス・アリスならいっか〜、って思っちゃいますね。
作家別の展示ではありますが、取扱いギャラリーがブース出展している場合はその情報もしっかりキャプションに載っているのです。
さて、Unlimitedはギャラリー出展エリアのHall2に比べて一足早く始まります。
そのオープニングの日にハプニング!
この床に敷かれた絵画作品…目の前で慌ただしくバリアーが張られました。
どうしたどうした!?
と見てみると…
足跡!
これは。。。誰か踏んじゃったな〜!
ギャラリーブースエリア
Unlimitedよりも会期が短いアート・バーゼルのもう一つのメイン会場です。
入り口前の広場には壁面などに文字を描くコンセプチュアル・アーティスト、ローレンス・ウェナーのインスタレーション。最近惜しくも亡くなったアーティストです。
彼の作品はチューリッヒの現代美術館にもありました。
さて、建物の中ですが、めちゃくちゃ広いし、ギャラリー数もすごく多いです。
建物の中庭もなんだかすごかったです。
ギャラリーはすごい金額のブース出展料を支払っているそうです。
ギャラリーの名前を見ると一階に超有名ギャラリーが集中しているので、一階は高いのでしょうね。2階は扱っている作家も若手が多く、面白い作品も多い印象でした。
バイエラー財団のブースでは、美術館に展示してあったゴヤの「戦争の惨禍」のシリーズ版画が。まさか売ってないよね?と思いますが、よっぽど財団として発信したいメッセージがあるのだろうな、と思いました。
一階は現代アートだけでなく、ピカソなどの近代の作品を扱っているところもありました。
そんな中、警備員までいるよ!ジェフ・クーンズ!!!!
こちらの作品のシリーズは「アートのお値段」と言うドキュメンタリー映画で制作の様子が撮影されていました。現代アート界において、どんな存在かわかりやすいと思うので、よかったら見てみてください。
こちらはトム・サックスのキティちゃん。
あ、この土器みたいなの、ヴェネチア・ビエンナーレで見たな〜。
この奥のパッチワークの作品も、確かロマの生活を描いているとか。ポーランド館で見たような。
この古いシネマの看板みたいなのもフランス館あたりで見たような。
デュマはグラッシで個展ありましたしね。
こんな感じで、ヴェネツィアで見た作家の作品がたくさんありました。ビエンナーレに行った金持ちが買いたいって思うのかもしれないですし、世界のアート関係者が、直接ギャラリーに交渉して、美術館購入したり、展示の依頼をしたりするのかもしれないですね!
もちろんUnlimited展の関連作家の作品も。
日本のギャラリーの出展が少なかったので、日本人作家さんは多くはありませんが、いくつか見ることができました。海外ギャラリーの取り扱い作家さんもいらっしゃいますものね。
毛利悠子さんの作品。ユニークで楽しい。
しかし、オープニングの日はすごい人と熱気で瞬間的に疲れてしまい、ちょっと歩いて回ってすぐ撤退しました。
大金を手に入れて、豪邸にアートを飾る気持ちで行けば楽しいかもしれません。
私には長時間滞在してじっくり見るのは、なんだか無理でした。
しかし、帰ってきてから、インスタでフォローしている画家がとある有名ギャラリーで出品していると知り、実際に本物を見たことがなかったので、後日、会期中にもう一度行ってきました。
そしてついにご対面!と思ったら…
展示していなかった…
これがどういう意味を示しているかと言うと、もうすでに売約済み、と言うこと。
アート・バーゼルは裏に巨大な倉庫があり、毎日のように、売れれば夜中のうちに展示替えをするのです。
各ブースには小さな交渉部屋みたいなのがありますが、もっといい交渉部屋が別フロアにきっとあるんだろうし、そもそも私が持っていたVIPカードよりもランクが上のカードもあって、スーパーな招待客は一般のVIPよりも先にゆっくり鑑賞して先にお買い上げしちゃっているはずなのです。
スーパー階級社会。お金が全て!
アートの、私には縁のない世界です。。。
おまけ
アート・バーゼルは老舗のアート・フェアで買うには敷居が高い感じがしますが、バーゼルでは同時期にListe、Voltaなど若いギャラリーも出展できるようなフェアがあり、見る方としても若手発掘感があってこちらも楽しいと思います。
デザイン・マイアミやスイス・アート・アワード、フォト・バーゼルなども同時期に開催。
もう、バーゼルはお祭り騒ぎで大変なことになります。街中でライブパフォーマンスもやっています。
そんなイベントだらけの1週間ですが、私はヴィトラ・サマー・パーティというイベントに行ってきました。
建築の聖地、ということで以前記事を書きました。
すごいゲストの人数。招待客だけでなく、並んで登録すれば誰でも入れるっぽい。食べ物、飲み物無料…!普段は入れないエリアも公開されていました。
何人か友達の友達とかで話したりしましたが、会う人のほとんどが建築家。東京の建築プロジェクトに関わっているという人も。
犬も歩けば建築家に当たる。なんかすごい。
ヴィトラ・サマー・パーティはアート・バーゼルが開催しているメッセとの間に臨時のシャトルバスが運行していて普段はアクセスが大変なヴィトラも帰りの時間を気にせず楽しめました。
こちらはデザイン・マイアミ。
家具などのインテリアデザイン中心。
こちらはListe(リステ)。アート・バーゼルに比べると照明が弱く、会場としては野暮ったいけれど、作品は若くて面白い。
スイスアートアワード。これに選ばれて出せるだけでも2000スイスフランくらいもらえるらしいという噂。スイスのアーティストにとって登竜門的な感じでしょうか。ちょっと詳しいことはよくわからない。
アート・バーゼル中、とにかく連日暑かったです。
私はクーラーのある場所を求めてアート・バーゼルに何度か行ったりしましたが、
バーゼルの人たちはためらい無くライン川に飛び込んでいました。バーゼル名物の川流れです。
しかも6月の半ばごろの開催なので、一年で一番日が長い時期。この写真で夜の8時くらいです。