これまで、アートスペースのハシゴと言えば、銀座が多かったのですが、これからは東京駅のしかも八重洲口に行くことも増えそう!というお話です。
東京駅といえば、ステーションギャラリー、KITTEに入っているインターメディアテク、三菱一号館、など丸の内側がオシャレだし、洗練されているし、良いアートスペースや博物館があるイメージだったのですが、八重洲口も今、再開発が進んで少しずつ景色が変わってきましたね!2022年に設置された吉岡徳仁さんのパブリックアートも、印象的です。
八重洲口と言えば、旧ブリヂストン美術館、アーティゾン美術館は外せません。
それこそ、東京駅から徒歩圏内ということもあって、地方に住んでいた時は、新幹線の駅から便利なので、さっと立ち寄れる質のいい私立美術館として父に連れられて行った記憶があります。建て替えを経てアーティゾン美術館として生まれ変わり、現代アートにもすごく力を入れていて、面白い企画も多いので前よりさらに好きになりました。
入り口の位置が変わったので、要注意です。以前のブリヂストンを知っている人は、見つけられなくて帰ったという話も聞いています。w
そして、OPENしたばかりの、リクルートクリエイティブセンターの新アート拠点、BUG ギャラリー。銀座にあったG8とガーディアン・ガーデンが閉館して、寂しい限りでしたが、ずいぶん尖ったギャラリーが完成したようです。
最近見た展示を紹介したいと思います。
ジャム・セッション 石橋財団コレクション×山口晃「ここへきて やむに止まれぬ サンサシオン」展
(2023年11月19日まで)
サンサシオンとはフランス語で「感覚」という意味なんだそうです。
アーティゾン美術館の、所蔵作品とアーティストがセッションするという試みが年に1回ペースで開催されています。
森村泰昌さんが青木繁の「海の幸」を解釈していく展示は見応えがあり強烈に記憶に残っています。今回はセザンヌと雪舟の作品を山口さんが模写して気づいたことなどを展示してあり、山口さんの漫画を交えた文章が痛快で楽しく、全部読みたくなる内容でした。巨大ジオラマインスタレーションみたいな作品は、平面的とも考えられる水墨画の中にある空間を体感できて不思議な感覚になりました。
山口さんの作品と言えば、超絶技巧の激ウマ絵画、日本風油絵、現代風絵巻物、、、なんと言うのが正しいのかわからないけれど、普段作品の最終形態として見るものがとてもすごくて魅力的なんですよね。今回の展示は絵画作品の割合は少なめだったかもしれませんが、プロセスがたくさん見えて、とてもよかったです。
会場自体の構成も面白くて、テトリスを組んだような壁がパーティションになっていて、足元に空洞ができていて、隣の空間と不思議なつながりがあったり、パーティションの向こうに見える景色の切り取られ方が面白かったりと、いろんな角度から鑑賞できて、気が抜けない構成でした。
パラリンピックポスターの作成に関しての葛藤を描いた漫画も興味深かったです。現代に生きるアーティストが、政治に利用されっぱなしにはならない方法を模索しつつもやりきれなかったジレンマが漫画に描かれていて自分は何ができただろうか。。。と考えてしまいました。
ポスターは、ネオ東京的でSFチックな流鏑馬を描いた作品で、背景の街の中にハンディキャップのある人たちの日常の一コマや、ブルーシートを被った家、福島原発なども描かれていて、オリパラのそもそもの目的、目標はなんだったか、「復興五輪」はどこに行ったのか。色々思い出す内容でした。
すごく良かったのに、あまり写真を撮らなかったのはどうしてだろう。見ることに集中できたのかもしれません。スケッチOKの展示なので、スケッチブックと鉛筆を持っていくと良いかもしれません。
山口さんが目指しているのは、海外のようにイーゼルを立てて油絵で模写できるような展覧会のようです。この展示もソファや椅子がたくさん置いてあったので、じっくり過ごせます。
アーティゾン美術館は、所蔵コレクションも充実しているので、とにかく時間がなくなる。
私のおすすめは、現在洛中洛外図屏風が置かれているお部屋。
日本画は保存の面で繊細なので、美術館などではガラス越しに見ることがほとんどです。
ここも、そうなんですけど、、、ガラスの継ぎ目がないんです。8mくらい。多分、アクリルガラスなんだろうとは思いますが、継ぎ目のないショーケース、やばいんです。
うっかり近寄ってぶつかりそうなくらい、ガラスの存在を消しています。
印象派中心に本を読む女性の絵画を集めてコーナーもヨーロッパの文化歴史を知れて良かった。
次回のセッションはヴェネチア・ビエンナーレの日本館代表としても話題の毛利悠子さんとのこと、楽しみ〜!
と言うわけで、アーティゾン美術館は東京駅・八重洲口エリアのおすすめNo1スポットです!
BUGこけら落とし「雨宮庸介個展「雨宮宮雨と以」
(展示会期は終了しました)
これまで、写真とグラフィックの登竜門的コンペ、「ひとつぼ展」「1_WALL」と展開してきたガーディアン・ガーデンが閉館となり、新しい若手発掘コンペと企画展を開催していくアートスペースが、八重洲南エリアのリクルートビルの1階にできました。
コンペもこれまではグラフィックデザイナーの割合が多かったイメージですが、今後はもっと現代アートに向かっていく気配を感じます。前述のアーティゾンを始め、現代アートに力が入った美術館の学芸員、研究員が審査員にずらり。それでもグラフィックデザイナーも審査員に残すあたりが、リクルートのこれまで培った日本の広告、デザイン界を牽引するデザイナーとの関係性と、リクルート(のクリエイティブセンター)らしさ、個性が出て期待が持てます!
近年の1_WALLの入選者を見ても、グラフィックと言うには、あまりにも破茶滅茶なのでは…と冷や汗をかくほど尖ったアートな作家が多かったのですが、BUGは「思う存分、めちゃくちゃやっちゃってください。」という方向性を最初から示していて、ドキドキします。
去年あたりに崩壊したか?とも囁かれるアートバブルを尻目に、いわゆる現代アートマーケットの潮流には乗らないよ!と宣言した上でのこけらおとし…。
「溶ける林檎」の立体作品が印象に強い雨宮さんですが、初めて作品を直に拝見しました。
めちゃくちゃでした(褒め)
入り口はオシャレなカフェなので、駅前の喧騒の奥で展示がある、、、と言う導線にまずびっくりしましたが、そんなのどうでも良くなるぐらい引き込まれました。
レクチャーパフォーマンスと題したパフォーマンスも、言葉とイメージの洪水に飲み込まれていくような、面白さがありました。アーティストとして全力で生きている。生き急いでいる。どの瞬間もアーティスト。この人が物事をどのように見て、どんな言葉に変換してくれるのか、一瞬も見逃せないような疾走感がありました。
石巻のビデオ作品も衝撃でした。
手に刻んだ母の字。ブラインドが上がり、ガラス越しに見える2020年代の石巻の景色。
言葉を失う。
これらを見た後に、改めて「溶ける林檎」に向き合うと、印象が変わってきます。
林檎はどうして溶けたのか、溶けたのか?それとも林檎になるための過程なのか?
(作者の意図と違っていたとしても)
自分の人生の全ての瞬間を感覚を研ぎ澄まして、死ぬまで生き切りたい。
そんな風に思える展示でした。
今後、BUGがどのようになっていくのかは、まだまだわからないところですが、期待してこれからの展示も行ってみたいと思います。(駅近なのが、すごくいいですよね!オシャレカフェもいつか利用したい!)
以上、これからも見逃せない進化中の八重洲アートスポットでした。