三菱一号館美術館
丸の内でひときわ英国感漂う建築がこちらです。
設計はジョサイア・コンドル。1894(明治27)年より事務所として使われました。
その後、1968(昭和43)年に老朽化のため解体。しかし40年の時を経て、忠実に復元され2010年より美術館として使われています。
中庭には薔薇がたくさん植えられ、穏やかな気候の今日はたくさんの人がテラスでワイングラスを傾けていました。
(え?平日の昼下がりだよね?丸の内文化ついていけないんだけど。汗)
あまり人が写らないように撮りましたが、エシレの紙袋ぶら下げたり、ウェディングフォトを撮っている方もいたり、本当はとっても賑やかでしたよ。
周りのお店も異国情緒あり。
ちょっとだけ、本当にちょっとだけだけど、ロンドンのコロンビアフラワーマーケットを思い出しました。こんな感じでクリスマスリースたくさん売ってたな〜って。
ルドン、ロートレック展
ルドンとロートレックの2枚看板での展示ってちょっと不思議な感じもしますが、三菱一号館美術館の代表的な所蔵品とのこと。今回は、本当はソフィ・カロという現役のフランス人現代アーティストも併せて3枚看板で展示をする企画だったそうです。
ソフィ・カロは手紙を使ったり、言葉で人々の心情を描くのがうまい人気作家です。
残念ですが、新型コロナの影響で、この3人展は実現しませんでした。数年後に延期のようです。
「私はまだ存命です。」とオフィーリアのように仰向けになった写真とともに、次に来日できることを願うメッセージが送られていました。
展示の構成
三菱一号館美術館所蔵のロートレック作品を中心に、ルドンの作品の多くは岐阜県美術館からの貸し出しでした。
他にも同時代を生きたフランスの画家たち、そして影響を受けた日本人画家の作品も並んでいました。
会場は思ったよりも広く、見応えがありました。
本当にいい絵画が多くあり、比較的小さめのカンバスの作品が多かったのですが、額装も含めてどれも素晴らしく、オルセー美術館の一画をじっくり見たぐらいの満足感がありました。
一番の見どころ
ロートレックの作品はポスター芸術としての認識がありましたが、本当に広告として街に貼られてたというよりは、ポスター版画を部屋に飾るのが流行していて、そのための商品だったとのことです。なので、ほとんどはリトグラフ(版画)です。今回の展示では原画もいくつかありました。新型コロナの影響で、外国から作品を借りるのは大変困難な状況です。
それでもロートレックの原画が日本にあるってことにちょっと感心しました。
ルドンの作品は多くが岐阜県美術館からやってきていました。岐阜県美術館はどうしてルドンをこんなに持っているんだろう。。。すごい。
しかし、今回の展示の一番の見どころはルドンの『グラン・ブーケ』です。これは三菱一号館美術館の所蔵です。
ポスターにもチラシにも掲載されている「グラン・ブーケ」ですが、花をモチーフにした絵画って、よくあるやつだなって印象です。
代表作がポスターなんかに掲載されている時って、実際に見たときに「はいはいこれね。まあ実物はいいよね。」っていう確認作業になりがちな私です。しかし。
この「グラン・ブーケ」は全然違いました。
薄暗い小部屋に1点だけ展示されています。
部屋に入った瞬間、息を飲みました。
大きい!!
資料によると248.3x162.9cm。
そして暗い中に浮かび上がる、パステルの鮮やかさ。色の重なり。踊るような花々。
印象的なブルーの壺。
すごい、すごい、すごい!!
度肝を抜かれました。
まじか。ルドンって、精神描写みたいなのがシュルレアリスムを先行してるっぽくて、ちょっと面白そうな画家だな、ぐらいに思ってはいましたが、本当にすごい画家でした。
この絵はどこぞの男爵かなんかに依頼されて、依頼主のシャトーの壁面を18分割して描いたものの一枚なのだそうです。18という記録があるにも関わらず、現存するのは16枚なのだそう。お屋敷のその部屋は、薄暗い感じだったそうで、トーンを抑えた絵を望んだそうです。しかし、ルドンはこの一枚だけ、依頼主の要望を無視して、鮮やかなブルーを入れたのだとか。
どういう経緯かわかりませんが、この奇跡のブルーの壺の「グラン・ブーケ」は日本にあり、残りの15枚は全てオルセー美術館所蔵とのことです。
え?どういうこと??
どういう経緯か知りません。
なんとなく、バブルかな〜??なんて思ったりもしますが。
やはり、芸術を大金で買って、庶民に安くシェアするのは、金持ちや企業として必要な社会貢献だと思いました。
どんな理由があろうと、どんな風にフランスに思われようと、これを日本に持ってきてくれてありがとう!!!手離さないでいてくれて本当にありがとう!!!
花の絵でこんなに感動することがあるとは思いませんでした。
この絵がずーっと日本にあるんだと思うだけでちょっと幸せです。また見れる可能性が高いからです。特に新型コロナ以降は「美術館の価値は所蔵品と常設展」と言われています。企画力だけでなく、自力で見せられるものを持っているかどうかで勝負が分かれるのです。
バブルでアホみたいな高額で世界のアートを蒐集しまくった日本ですが、馬鹿にできません。日本の美術館同士でレベルの高い作品の貸し借りができるということも、この展示は示してくれたように思います。
他にも屏風みたいな衝立に描かれた作品とか、頭が空に浮いてる不思議な絵とか、顔のある蜘蛛とか、素晴らしい展示だったので、ぜひ興味のある方は行ってみてくださいね!
(↑不思議な蜘蛛。私物の画集に載ってた!)
実力のある画家なのに、同時代の他の作家に比べてあまり名前を聞かないのは、保存が難しいパステルや木炭の作品が多いことが原因なのでは?と思いました。絵画の世界では油絵、彫刻ならブロンズ。素材で価値が担保されるというのはよく聞く話です。
私は、今日で一気にルドンのファンになりました!
おまけ
海外の美術館に行けない寂しさを、作品、建築が癒してくれました。
マントルピースが素敵です。
元銀行部分を復元したカフェエリアも超素敵です。レトロ建築好きにはたまらない。
節約ダイエット中なので、覗き見だけにしました。。。写真はないので調べてください。