千葉の森林を想う
千葉の災害状況が日々報道されていますね。報道を見ると祖母の家のエリアは比較的被害が少なかったんだな、と気づきます。昨晩祖母と話をしていたら、「きっと裏の杉林が風からお家を守ってくれたのよ。」と言っていました。
その杉林の中の様子もちらっと見に行きましたが、強風でバキバキに折れていて、幹の3〜6mぐらいの高さで折れ、さながら森の中に剣山があるようでした。
車が通れる状態だったので、もしかしたら近所の重機を持っている工務店さんが最低限片付けてくれていたのかもしれません。
しかしそれは応急処置にしかすぎないし、安全を考慮するとなるべく早いうちに完全撤去などの処置しなくちゃいけないんだろうな。
(遠くから撮ったのでわかりにくいですが、幹の途中で折れて倒れてしまっています。)
どうも、幹の真ん中で折れてしまったものは溝腐病と言う菌によって外側が腐る杉の病気にかかって弱くなっているものが多かったようです。これは林業の衰退により放置されていたことに一つ原因があると専門家の意見が朝日新聞記事に書かれていました。
逆に言うと根っこから倒れているものは幹がしっかりしていると言えるのかな?
建材としてたくさん植林された杉の木ですが、林業の衰退によってなかなか手入れが行き届いていないのが現状のようです。
これから千葉の倒れてしまった木をどうするか問題が浮上してくるのではないかと思います。建材などに利用できるものがたくさんあるといいな、と思います。台風で倒れているので、一本一本丁寧に引っかからないように倒したものを運び出すのとはわけが違います。そりゃあ、もう、大変な作業だろうな。。。
森林の所有者が林業を営んでいるとは必ずしも限りません。ただ土地を持っていて放置されている所もあるはずです。だからと言って安易に全部切ってしまえ、とならないように願っています。それは「皆伐」と「間伐」の話を聞いたからです。
※今回書くことは聞き齧ったようなことで、専門外ですので情報知識不足の点はあしからず!
皆伐
ある一帯の木を全て一度に伐採すること。重機も入れやすく作業がしやすい。残す木を気にしないでいい。つまりめちゃくちゃ効率がいい。
伐採後は苗を植えることで持続的な林業を可能とすると考えられてきたが、土砂災害、環境破壊の面で疑問視する声が高まっている。
間伐
植林する時には密集させると真っ直ぐ長く木が伸びていくけれど、成長に合わせて間引いていくことが必要。そこで間伐が行われる。健やかな森林の維持に欠かせない作業。
間伐材は建材としては十分成長していないので、過去には割り箸を作るアイデアで森林維持を試みたことがあるが、安い海外製に取って代わられている。間伐材で家具を作ったり、バイオ燃料にしたりなど、有効利用が試みられている。
皆伐後に起こる問題
きっと林業を営まれている方からすれば、間伐が当たり前で、皆伐はあり得ないと思っていらっしゃるのではないでしょうか。それほど今皆伐は問題だらけと分かっているからです。ただし、去年から民間業者による大規模伐採が許可されたことにより、効率優先、目先の利益優先、皆伐は増加しているようです。確かに、皆伐してもしっかり植林すれば、何十年もかかることではあるけれど、森林は戻ってくるような気がします。
もしくは、自然に任せれば、原生林が取り戻せるのではないかと言う想像もしてしまいますよね。
知人が紹介していたサイトにこんなものがありました。
毎日新聞スクープ記事「民有林1万ヘクタール超 伐採後の植え直し進まず」 | NPO法人 持続可能な環境共生林業を実現する自伐型林業推進協会
この記事では、現代人が必死に植林しているにも関わらず、木が成長しないで頭を抱えている様子がスクープされています。
主な原因として、鹿などの動物に苗木が食い荒らされていること。ネットを張っても雪で壊れ、また、十分に育った木がない場所の地盤は非常に弱く、土砂災害などで苗木ごと流されてしまうケースもあるとのことでした。
伐採→植え直し→造林→伐採
このサイクルをイメージしていたのに、
伐採→植え直し→失敗→植え直し→失敗……造林進まず。
私の知人は「補助金で鹿に餌をやっている。」と言っていました。
深刻な鹿問題…
そういえば、千葉ってキョン問題あったな
キョンは中国・台湾に生息するシカ科の動物で、レジャー施設から脱走後大繁殖、現在千葉県内だけでも約5万頭いるとされています。
キョンに限らず、そもそもニホンジカも畑を食い荒らすので、農家の敵と言われています。キョンはニホンジカが食べない植物も食欲旺盛に食べるので、さらに厄介なようです。ニホンジカもキョンも見た目は可愛らしいけれど、今後、千葉の倒木により伐採された森林を再生させるのに厄介な存在になるかもしれません。
千葉県の倒木後の皆伐問題はこれから浮上するはず
この皆伐問題を教えてくれた知人によると、千葉南部では倒木が多かったので土地所有者が業者に一任するケースがすでに出ている様子なのだそうです。
一番効率が良い方法かもしれませんが、どうかまだ生きている木を切らない方法を選択して欲しい。
もう一度祖母の言葉を思い出す。
「裏の杉林が守ってくれたのよ。」
全部伐採してしまったら、今度は倒木では済まないかもしれません。
今度は土砂が襲ってくるかもしれません。
今回大丈夫だった家も吹き飛ばされてしまうかもしれません。
ある里山に遊びに言った時に、地元の方が鎮守の森に祀られているシイノキを案内してくれました。小さな祠があって、地元の人に長年大事にされてきたことがわかります。
その地元の方の話によると、「この大きな木がこの土地の地盤を守ってくれている。祠は絶対に切ってもいけないと言う印、先人の知恵なんです。」ということでした。
禿山だった六甲山
兵庫県神戸市にある六甲山のことをご存知だろうか。明治の六甲山は伐採が進み禿山だった。今の緑豊かな姿からは想像もできない。神戸港に降り立った四国の植物学者、牧野富太郎は「はじめ、雪が積もっているのかと思った」と記したらしい。土砂が流出し大水害を繰り返し、その災害対策として明治から昭和初期にかけて多種多様な木々の植栽と手入れを継続し、今の六甲山があるのだという。
商業目的ではない。防災と治水を目的とした緑化事業は画期的だったと思う。
そして今、六甲山は豊かな植生と名水の山となっているのです。
千葉の森林を守るために
倒木で深刻な被害にあった人たちがいるのは分かっているし、今も悲痛な思いでいらっしゃるだろうと思います。
部外者が勝手なことを言って申し訳ない。
数年前、祖母の家の裏の林が一部ごっそり皆伐された時に悲痛な気持ちになったこともあるし、祖母の家の水道は井戸水なので、どんどん森林がなくなって水がなくなったらどうしようって思ったりもするのです。
どうか未来のために安易な結論を出さないように、良い専門家に相談して持続可能な森林を残して欲しい。
そう願っています。