なる子とマーナル☆

少女の心を忘れない、なる子とマーナル☆によるアート・旅行・キッズ応援ブログ

ワイエス展 素描とテンペラ

クリスティーナの世界

アンドリュー・ワイエス(1917−2009)と言えば、美術の教科書で見た、草原の中のポツンと一軒家みたいなのに向かって倒れ込む女の人の絵です。寂しさを感じてとても印象深い作品。

 

こういう感じの絵

 

何か絶望するようなことがあったのかしら、なんて思っていましたが、このモデルの女性は足が不自由だったことを最近知りました。クリスティーナ、ワイエスの近所に住んでいた方だそうです。

 

地面を這いながら、家に戻るところなのでしょうか。

知らないアメリカの姿を突きつけられた気持ちになりました。

「クリスティーナの世界」というタイトルが付いています。

彼女の世界は、家とその周辺と、家族と多分景色的にごくわずかの近所の知人。。。

彼女の日常は見る人によっては非日常的な世界にも見えるでしょう。

この草原を駆け抜ける風が、心の中にまで吹き込んでくるような、ぎゅうっと寂しい気持ちになる名作です。

 

テンペラという技法で細密に描かれています。

油絵よりも昔からある、卵を使った古典絵画技法ですが、顔料の発色が綺麗で、日本画の発色にも近いものがあります。

 

と、いろいろ言いつつ、ワイエスの作品を間近で見たことがなかったので、久しぶりの日本での展示だという東京都美術館で開催しているワイエス展に行ってきました。

昔、教科書で見たときは、当時まだ生きてる画家ってことを知りませんでした。

亡くなったのが2009年、21世紀まで活躍した方だったのですね!

 

東京都美術館 ワイエス展

東京都美術館、略してトビカンは100周年。

https://www.tobikan.jp/exhibition/2026_wyeth.html

人気の企画展が多く、田中一村展ではずいぶん並んでやっと入れた記憶があったので、前売り券をネットで購入し、行ってきました。

 

 

ほとんどが撮影不可だったので、ほんの一部ですが、紹介します。

こちらは水彩で描かれた作品。さらっと描いてるのに激ウマ。羨ましい。

 

 

 

ワンちゃんの毛並みの細やかさで、どれだけ細密かがわかっていただけると思います。

 

多くの作品に「窓」や「扉」が描かれていて、こちら側と、向こう側の世界を想像させるような作品群だと思いました。

 

もちろん、この企画には学芸員さんのその意図があってのこと。

「窓」の向こうに「窓」の作品が見える仕掛けが会場内に作られていました。

作品解説によると、外の世界と画家の内なる精神世界の境界をつなぐもの、とのこと。

 

確かに、ワイエスの絵画は単純な細密画とは言えないものを感じます。リアルなのにリアル越え、一部シュルレアリスムの系譜と言われた所以も納得がいきますね。

 

アーティストと日本の芸術文化生活を支える企業たち

今回の展示では「丸沼 芸術の森」所蔵の作品が多くありました。

https://www.marunuma-artpark.co.jp/

私も最近存在を知って、気になっていたので、「あっ」と思いました。

 

アーティスト支援を目的に建てられた施設で、最近リニューアルもしたそうです。国内アーティストが格安でアトリエ利用している他、海外との交流事業でアーティストの滞在制作プログラムがあったりするそうです。有名なところでは村上隆さんもアトリエを使っていたことがあるとか。

特に都心のアーティストは制作場所に苦慮していることが多く、大型絵画の作家はこの物価高と物件の高騰に悲鳴をあげています。

丸沼は埼玉県にあるので、東京からひどく離れることなく、制作場所を持つことができるのはいいですよね。羨ましい!

政府の文化芸術への支援がどんどん縮小される中、民間のこういった支えは、金銭的なことだけでなく、大いに心の支えになっているはずです。

ワイエスのドローイングを多数持っているのも、「素描の方が安いから」ではなく、一流の画家を目指すアーティストたちの勉強になるはず、という思いもあってコレクションされたと聞きました。

 

私が「さらっと描けてうまいなんて羨ましい〜」なんてバカなことを言っているうちは、三流。。。

 

本制作に向かうまでの習作や、ドローイングの数々が、名作を生み出すのだと教えてくれるように思います。

シンプルに名作だけ見たい人にとっては、「もの足りない」というレビューもある今回のワイエス展ですが、画家の仕事の深さを知ることができる展示でもあるのです。

 

もの足りない?「だったらあんたが描いてみろよ」という物量、ちょっとしたドローイングもうますぎて打ちのめされます。

 

すごいですよね、画家の仕事って。

 

他の作品もユニマットなど企業が所有する絵画も展示されていました。アート作品は美術館だけでなく、企業が財産として持ちながら、企画展の際には貸出することがあります。いろんな方々の協力があって展覧会が成立するのですね。

 

なかなか、円安で海外からの貸出が難しい中、作品を国内に持っててくれてありがとう!

 

美術展の入場料も高騰していますが、これぞと思った展示には、今後もなるべく行きたいと思います。